リニア工事をめぐり、静岡・山梨両県のトップが攻防を繰り広げています。山梨県で行われている掘削調査に関して県がJR東海に対し中止を求めたことについて、山梨県の長崎幸太郎知事は5月16日、重ねて苦言を呈し「科学的根拠が必要だ」と強調しました。
【写真を見る】山梨県知事「科学的根拠が必要」リニア・ボーリング調査 静岡県の中止要請に重ねて苦言
<山梨県 長崎幸太郎知事>
「(調査で)本来静岡県に流れるべき水が山梨県に流れてきているのか、仮にそうだったとしてもそれがどのくらいの量か科学的根拠が必要だと思っている」
16日の会見で「科学的事実を示してほしい」と改めて強調した山梨県の長崎知事。リニアのトンネル工事に伴い、JR東海は地質や地下水の状況を調べるため、山梨県側から静岡県側に向けボーリング調査を行っています。地下水が山梨県側に流出することを懸念する静岡県は5月11日、JR東海に対し、県が合意するまで県境から約300mまでの区間を掘削しないよう求める文書を出しました。
この文書に対し、山梨県の長崎知事は、静岡県が山梨県内の工事に口出しをしたことについて重ねて苦言を呈しました。
<山梨県 長崎幸太郎知事>
「違和感が最後まで拭い切れない」
<川勝平太知事(15日の会見)>
「我々はまさに科学的・工学的な議論を専門家を通してやっているわけですね。決して科学的ではない議論のレベルでやっているわけではありませんので、長崎知事の誤解ではないか。礼節を欠いているという自覚はあります」
川勝知事は「誤解」だと指摘した一方で、事前に相談せず文書を出したことについては反省の色を見せました。
一方、JR東海の丹羽俊介社長は16日の定例会見で、「静岡県の懸念について、解消できるよう丁寧に対話を進める」と述べました。
<JR東海 丹羽俊介社長>
「ボーリング調査に関して静岡県の懸念があるので、我々としても受け止めて対話しながら進めていきたい。具体的なデータに基づいて丁寧に対話をしていく」
今回の問題について、地方政治に詳しい専門家は…。
<法政大学大学院 白鳥浩教授>
「山梨県内の工事については静岡からお願いをすることはできるのかもしれないが、その場合でも隣県ですし、相手の了解を得てからやるのが本来であれば手続き的には望ましかった」
Q.最近の静岡県のリニアに対する姿勢については?
「どこかの段階で県民の意思を確認する手続きが必要になって来るのではないか。このままやっていくと、あまりに知事だけが突出している印象を与えてしまう可能性がある」
両者が強調する「科学的」な事実で溝を埋めることはできるのでしょうか?