放流アユ食い荒らすカワウ、新兵器で撃退へ 被害1000万円超、釣りシーズン開幕前に実証実験

アユの稚魚を放流する間、周囲を旋回しカワウを追い払うドローン(福知山市上柳・音無瀬橋下左岸)

 京都府の由良川に放流したアユをカワウの食害から守ろうと、京都府福知山市と由良川漁業協同組合(同市内記)は今春、ドローンでカワウを追い払う実証実験を始めた。カワウ対策でのドローンの活用は全国的に珍しいといい、効果が期待されている。

 漁協の組合員は4月下旬、福知山市の由良川に約4万3千匹(300キロ)の稚魚を放流した。稚魚を狙って水面ぎりぎりを飛行するカワウ。現場に立ち会った府猟友会のメンバーが直径約1メートルのドローンを飛ばし、備え付けの高性能スピーカーから猟犬の鳴き声を流したり、遠隔操作で花火を打ったりすると、慌てて飛び去った。

 放流は6月のアユ釣りシーズンを前に毎年この時期に行われる。養殖池で育てた稚魚は警戒心が薄く、自然環境に慣れるまで流れが緩やかな水域にとどまる習性があるという。

 放流場所に近い河川敷の竹やぶ「明智藪(やぶ)」はカワウやシラサギの営巣地となっており、合わせて約500羽が生息する。毎年、放流後に大量のアユが捕食される食害が発生しており、2021年には約1200万円の被害が発生している。

 このため市は、4月にカワウを有害鳥獣に追加した。市内でドローンの製造販売を手がける「アエロジャパン」に協力を依頼し、同社と府猟友会が共同開発した追い払い用ドローンを使って効果を確かめることにした。

 放流は5月25日までに9回に分けて計36万匹(2700キロ)を予定しており、9、10日にも市内の由良川でドローンを使った追い払いを実施する。

 日和隆組合長(74)は「ドローンの活用は助かる。物価高の影響で稚魚の単価は値上がりしており、食害の抑止につながってほしい」と話している。

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