「おいしい、楽しい、懐かしい!」小売市場への愛を「部員」がSNS発信 兵庫・神戸で「#こうべいちば部」始動

こうべいちば部を立ち上げた神戸市小売市場連合会の小林清美事務局長(左)と堀田百寧さん=神戸市中央区東川崎町1

 「おいしい、楽しい、懐かしい!」。そんな小売市場の魅力を、大学生らが交流サイト(SNS)でPRする新プロジェクト「こうべいちば部」が動き出した。神戸市小売市場連合会と甲南大(同市東灘区)が連携。実際に市場を巡って商品を購入したり、店主と交流したりした感想をインスタグラムに投稿する。誰でも「部員」になることができ、「おすすめの店や食材の活用方法をぜひ教えて」と参加を呼びかけている。(安藤真子)

 神戸市内の小売市場は、1980年代にはピークの110カ所を数えたが、スーパーやコンビニの台頭など時代の変化に加え、阪神・淡路大震災で打撃を受け、現在は19カ所まで減少。

 その中で、今なお残る市場の魅力と、市場で提供する食材の質の高さや働いている人たちの技術を知ってもらおうと、今年1月から活動を始めたのが「こうべいちば部」だ。

 きっかけは2021年冬、甲南大の3年(当時)で、市場巡りを趣味にしていた堀田百寧さん(23)が、大学の研究の一環で、同連合会の小林清美事務局長を訪ねたことだった。

 堀田さんは兵庫県南あわじ市の出身で、大学進学を機に神戸へ。食べることが好きなため、旬の珍しい食材を探して小売市場に足を運ぶようになった。

 「小売市場では、ただ食材を買うだけでなく、よりおいしい調理法を教えてもらうなど、お店や地域の人とコミュニケーションがとれる」と堀田さん。市場ならではの魅力に引き込まれ、「もっと深く知りたい」と同連合会にインタビューを申し込んだ。

 同連合会は1949年に発足。神戸市内各地の市場が連帯し、食料品の安定供給などに取り組んできたという。インタビューを通じ、堀田さんと小林事務局長は「学生など、幅広い世代に小売市場の良さを知ってもらいたい」と意気投合し、堀田さんが学ぶ甲南大に連携を打診した。

 その結果、同大の地域連携センターが学生を募り、今年2月から不定期に、市場巡りの催しが実施されることになった。

 同部の活動の特徴は、まず最初に、同連合会の担当者らから小売市場の歴史や現状を学ぶこと。その後、実際に市場を訪れて食材やおかずを購入したり、自宅で調理した感想を発信したりする。

 初回の市場巡りは灘区の灘中央市場が会場で、学生4人が参加。2回目は、東灘区のJR甲南山手駅前のセルバ名店会で行い、普段はもっぱらスーパーを利用するという同大3年の松居ももかさん(20)と同大2年の上間拓人さん(20)が参加した。

 鮮魚店や精肉店、花店など約30店が営業中で、コロッケや唐揚げなどを堪能。さらに、鮮魚店の動くミル貝にくぎ付けになった。店主にお勧めの食べ方を聞いて刺し身用にさばいてもらい、「歯ごたえがあって、しょうゆを付けなくてもおいしい」と、その場で新鮮なミル貝を味わっていた。

 2人は早速、購入した商品をスマートフォンで撮影し、インスタグラムに投稿。松居さんは「目の前でさばいてもらうのは初体験。食材に興味がわいた」と楽しそうだった。

 堀田さんは今春、大学を卒業して社会人になったが、活動は継続。同連合会の小林事務局長は「小売市場に足を運んでもらい、『おいしそう』『おもしろそう』といった小さな発見を大切にしてほしい」といい、「日常の買い物の選択肢に小売市場を選んでもらえるように」と目標を語る。

 そのためには、市場巡りの催しに加え、情報発信の強化が欠かせない。大学生に限らず、市場を利用した人は誰でも「#こうべいちば部」と銘打って感想などを投稿し、活動に加わってほしいと呼びかけている。

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