「点定札」全国初の出土 金沢市埋文センター、市内2カ所から発掘

金沢市埋蔵文化財センターが出土を確認した点定札=同市内

  ●鎌倉の「差し押さえ状」文献にのみ存在、使い方裏付け

 鎌倉時代に家屋や土地の差し押さえに使われた「点定札(てんじょうふだ)」の木簡が、17日までに金沢市南森本町と木越町の2カ所で見つかった。同市埋蔵文化財センターが発掘調査で確認し、国内初の出土としている。専門家は「文献で点定札の存在は知られていたが、実物が出てきたことはなく、貴重な資料となる」と指摘、武家社会の年貢の取り立てや土地管理の実態に迫ることができると説明している。

 金沢市埋蔵文化財センターによると、点定札は中世に領主が年貢などの未納入者、逃亡人の家屋、土地の物件を差し押さえたことを示す札となる。

 南森本町では2014年度に南森本遺跡で行った宅地造成に伴う発掘調査で、長さ25.2センチ、幅2.8センチ、厚さ0.4センチの札が確認された。木越町では15年度に木越光徳寺跡で実施した金沢外環状道路工事に向けた発掘調査で、長さ20センチ、幅4.5センチ、厚さ0.3センチの札が見つかった。

 いずれも出土当時は木簡の内容が分からなかったが、市埋蔵文化財センターが報告書として整理していたところ、昨年度まで金大学校教育学類の教授を務めていた黒田智氏(現早大社会科学総合学術院教授)が国内初の点定札の出土と指摘した。報告書は今年3月に刊行された。

 同センターによると、二つの札は13世紀のもので、「点定」を意味する「點定」と記されている。南森本の札には、人名か田んぼの名称とみられる文字も書かれており、点定札に関する鎌倉期の史料の説明と合致することが判明した。札には、食器を載せる食台の一種「折敷(おしき)」のような薄板が転用されたと考えられるという。

 今回出土した二つの札は一定期間、屋外にあり、くいや柱に釘で打ち付けたか、縄などでくくりつけて掲示したと想定され、文献を裏付ける内容になっているという。

 センターの鏡百恵主事は「中世の土地管理について、考古学的に確認された初めての事例になる」と話した。

  ●歴史の実態迫る発見

 黒田智早大教授 板の形状から、庶民の土地にどのように点定札が掲示されていたかがイメージできるようになり、より具体的な歴史の実態に迫ることが可能となる。新しい発見と言っていい。今後、周囲からも点定札が出てくる可能性がある。

 ★点定札(てんじょうふだ) 中世の土地管理で、家屋や土地などの物件を差し押さえる場合に使われる札。文献史料には差し押さえを行う耕地や屋敷に対し、点定札を「立てる」「打つ」などの方法で示すと記載されている。

南森本遺跡で出土した点定札の赤外線写真(金沢市提供)
木越光徳寺遺跡で出土した点定札の赤外線写真(金沢市提供)

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