<南風>オードブルの新時代

 私が編集長を務める情報メディア「ちゅらグルメ」で、春先と年末年始に圧倒的に伸びる検索ワードがある。それが「オードブル」だ。春先には入園入学、卒業式、送別会や歓迎会があり、沖縄の伝統行事の一つである清明祭もある。年末年始には、クリスマスや大みそか、正月があり、親族や友人など大人数で集まる機会が多い時期だ。

 沖縄に移住したころ、オードブルの登場回数に驚いた。社内での打ち上げや決起会など、度々、テーブルにずらりと並ぶオードブルの数に圧倒されたのを覚えている。親族との集まりや行事の際には、中味汁など伝統料理がそろう中、やはりオードブルも数台並んでいる。来客が多く、参加人数が読めない集まりの際は、オードブルが救世主にもなる場面もあり、なるほどと納得した。

 幹事をした際も、誰もが好む料理が詰まったオードブルは、好みを気にしながら総菜やつまみの買い出しをする労力に比べ、圧倒的に楽なのもうれしいポイントだと悟った。

 そのオードブルの世界も年々変化を遂げている。揚げ物中心で全体的に茶色のイメージだったが、最近では、豊富な食材を使用し、彩り豊かなオードブルが登場し、テーブルを華やかに演出してくれる。その背景には、コロナ禍でテイクアウトやデリバリーサービスの需要が拡大し、飲食店が売上の大きいオードブルを始めた戦略があった。家庭でプロの味を楽しめるという需要に見事にマッチした。

 中には高級食材を使用した2万円のフレンチオードブルや、イタリアンの前菜からデザートまでのコースが楽しめるもの、本格中華のオードブルもあり、需要に合わせた少人数用のオードブルも人気となった。オードブル文化が根付いている沖縄県で、プレミアムに進化し続けるオードブルの新時代に今後も注目だ。

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