経験50年でも道見失う 山菜採りシーズンの恐怖体験、ベテランが振り返る

「山菜採りでは背丈の高い木など目印を見つけることが大切」と語る佐藤さん=11日、弘前市内

 ネマガリダケやワラビなどを求めて山中深くまで足を踏み入れる山菜採り。この時期、年代や性別問わず多くの人がお目当ての山菜を求めて“宝の山”に繰り出す。夢中になるあまり、はっと気付いた時「ここはどこ?」とならないために、ベテランに注意点と対策を聞いた。

 「自分たちが来た道はどっちだ」。山菜採り歴約50年のベテラン佐藤一郎さん(70)=弘前市=は3年ほど前に味わったちょっとした恐怖体験を振り返った。

 その日は3人でネマガリダケ採りに出かけた。入山したのは午前6時ごろ。高さ2メートルほどの竹やぶをかき分け進む最中、道に迷わないよう、20メートルほどあるブナの木を目印に決めた。その木の周りで5時間ほどかけネマガリダケ約30キロを採集した。

 バッグいっぱいにネマガリダケを詰め、帰ろうと目印の木の地点まで戻ったところで、同じくらいの高さや枝ぶりの木が何本もあることに気付いた。朝は霧の影響もあって複数の木の存在に気付かなかったという。どの木を背に帰ればいいのか全く分からなくなった。

 来た時の踏み跡を捜そうと、二手に分かれて木の周りを歩き回ったがなかなか見つからない。さらに外側、5メートル先まで行って、やっと見つけた。

 「竹やぶに入ると上も横も分からなくなる。ベテランでも初めての山は気を付けなくては」と竹やぶの危険性を特に強調する。

 ほかに▽天候に注意し早めに下山する▽ラジオを1カ所に置き、音の聞こえる範囲で行動する▽必要以上の荷物を持たない-などの教訓を挙げた後、「あとは欲を出さないことかな。いっぱい採ろうとするほど奥へ進み、道が分からなくなる」と付け加えた。

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