社説:電気料金値上げ 納得できるよう説明を

 ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー高騰と円安を背景に、食料や生活必需品の価格上昇が止まらない。そんな中、大手電力7社が家庭向け電気の規制料金を、来月1日から値上げする。

 家計への打撃は避けられそうもない。妥当なものかどうか、確かめておきたい。

 電気料金には、経済産業相の認可が必要な家庭向けなどの規制料金と、電力各社の判断によって設定できる自由料金がある。

 規制料金の電気は、大手電力だけが提供している。多くの家庭が契約しており、値上げの影響は大きい。

 このため、各社の申請を受けて経産省の有識者会合が上げ幅を審査し、認可前には消費者庁とも協議することになっている。

 今回、値上げするのは北海道、東北、東京、北陸、中国、四国、沖縄の7社で、平均値上げ率は15.9~43.4%に及ぶ。中部、関西、九州の3社は現時点で予定していない。

 値上げ申請は、火力発電の燃料費が高止まりし、上昇分を料金に転嫁できる上限を超えた結果、2023年3月期連結決算で純損益が赤字となることを受けて行われた。経営を立て直し、電力を安定供給するには、やむを得ないのかもしれない。

 7社は当初、決着した上げ幅を上回る3~4割以上の値上げを申請していた。

 このため経産省は、最近の燃料価格の下落傾向を反映させるなど厳しく審査し、上げ幅を圧縮させたとする。だが、当初の要求が、あまりにも過大だったのではないか、との疑問が残る。

 消費者庁は、一部の大手電力がカルテルを結び、競合する新電力の顧客情報を不正閲覧した不祥事を、検証するよう求めた。

 これらは、公正な市場競争をゆがめる行為であり、その影響を解明せずに、値上げをするのは許されないはずだ。経産省は、今後も検証を続けるという。

 いずれにせよ、値上げに当たって消費者に納得してもらえるような説明が要るだろう。

 政府は今回の値上げに先立ち、1月の使用分から標準的な世帯で月2800円程度を補助して負担を軽減している。だが、予算は9月分までしかない。適切な「出口戦略」を用意してほしい。

 また、再生可能エネルギーの利用促進などで、輸入燃料に頼りすぎない電力の供給態勢を、早期に構築しておくべきである。

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