社説:Jリーグ30年 地域密着の理念徹底を

 サッカーのJリーグが始まってから30年を迎えた。

 長く待ち望まれたプロリーグが誕生し、東京・旧国立競技場で開幕戦が行われたのは1993年5月15日だった。

 サッカーをプロ野球と並ぶ人気プロスポーツに押し上げ、日本サッカーのレベルアップにつながったのは間違いない。

 創設当初、クラブ数は10に過ぎなかった。段階的に増えてJ1、J2、J3合わせて今季は60クラブに達し、地域的にも41都道府県に広がった。

 地域密着を掲げ、企業名を排して、プロ野球とは一線を画す仕組みを貫いてきた。地域に根差すスポーツ文化の振興という理念は、企業や学校中心だったスポーツに新風を吹き込んだ。その理念にバスケットボールのBリーグなど他競技が追随したのは、取り組みを評価した証しにほかならない。

 生まれ育った地域にクラブがあったからこそ「サッカーを始め、プロになれた」という選手は少なくない。ただ、神奈川が6クラブを擁する一方、滋賀など空白6県での活動の遅れは気がかりだ。

 京都サンガFCは、監督の交代と主力選手の出入りが多く、長らく低迷が続いた。4度のJ2降格を乗り越え、再び昨季からJ1で戦っている。より一層の地域密着を進め、京都府民にさらに愛される存在になってほしい。

 日本はサッカーW杯に7大会連続で出場し、今や常連だ。昨年のカタール大会ではドイツ、スペインから金星を挙げて16強入りを果たした。Jリーグの裾野の広がりが代表チームの強さを下支えしていると言えよう。海外で活躍するJリーグ出身選手が珍しくなくなったのもうれしい。

 一方で、この30年間、観客の減少やクラブの経営危機など厳しい現実にも直面してきた。とりわけ新型コロナウイルス禍での観客制限は厳しい試練となった。クラブは経営力を磨き、Jリーグは制度的な対応を考える必要がある。

 今季、Jリーグは新たな成長戦略を描く。各クラブへの分配金を見直し、集客力があり好成績を残すクラブに手厚く配分する。人気選手がそろい、実力もずばぬけた欧州の強豪と肩を並べる「ビッグクラブ」を育てるのが狙いだ。

 ただ、極端な優遇策の裏側では、財政的にひ弱なクラブの戦力低下や経営難を招く恐れがある。クラブ間の格差拡大は、地域密着の理念に逆行し、Jリーグの魅力をも失うことにならないか。

© 株式会社京都新聞社