社説:GDPプラス 賃上げと内需で伸ばせ

 新型コロナウイルス禍の影響から、経済活動が回復しつつあるのを反映したと言えよう。

 2023年1~3月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、前期比0.4%増、年率換算で1.6%増と、3四半期ぶりのプラス成長となった。

 堅調な速報値を受け、17日の東京株式市場では国内外の投資家から買い注文が集まり、日経平均株価は終値としては約1年8カ月ぶりに3万円の大台に乗せた。

 8日からコロナの感染症法上の位置づけが「5類」に移行し、経済活動は一段と活発化している。

 ただ、食料品や生活関連の物価高は圧迫要因となっており、世界経済にも不透明感が強い。下振れリスクも念頭に注視したい。

 GDPを押し上げたのは、約半分を占める個人消費だ。0.6%増と4四半期連続のプラスで、外食や旅行に加え、半導体不足が和らぎ納期遅れに改善の兆しがある自動車販売も伸びた。

 企業の設備投資も、マイナスを見込んだ市場予想に反し、自動車関連を中心に0.9%増加した。

 内需が回復する一方で、失速したのが輸出である。統計上輸出に区分される訪日客の消費は増えたものの、半導体製造装置などが落ち込み4.2%減だった。

 利上げを続けてきた米欧では、景気の減速が懸念されている。米国では銀行破綻が相次ぎ、金融不安が高まっている。加えて、政府の債務上限の引き上げを巡る対立は、世界的な金融の混乱を引き起こしかねない。外的要因が日本経済を下押しする可能性がある。

 国内では食品や日用品の値上げが続いている上、6月には多くの地域で家庭向け電気料金が大幅に引き上げられる見込みだ。家計の節約志向が強まるかもしれない。

 連合によると今春闘の平均賃上げ率は4%近くに達したが、実質賃金は3月まで12カ月連続で前年実績を下回る。

 生活を守り、消費を支えるには、継続的な賃上げが必要だ。適正な価格転嫁を通じて中小企業へ波及させることも欠かせない。

 23年3月期決算では、資源高と円安で恩恵を受けた商社などを中心に、上場企業の純利益の合計が前期比7.4%増となった。

 京都と滋賀でも、連結売上高が初めて2兆円に達したニデック(旧日本電産)や京セラをはじめ、増収企業が8割を上回った。

 好業績の企業が中心となり、人や成長分野への投資を増やし、景気をけん引してもらいたい。

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