青森県のニホンザリガニ、50年に絶滅の危機

県内にすむニホンザリガニ。体長は6センチほど。2050年には県内での生息が難しいとの結果が出た

 青森県に生息するニホンザリガニが2050年までに絶滅の危機に直面する可能性が高いことが、東京大学大学院の池田紘士准教授(進化生態学)らの研究グループの調査で分かった。気候変動が主な要因。内容は12日発行の英学術誌に掲載された。

 ニホンザリガニは日本固有種。かつては北海道や東北地方の広範囲の河川にすんでいた。しかし今では北海道と青森県が主な生息地に限られ、南限は秋田県大館市とされる。環境省のレッドリストは、絶滅の危険が増大している種に指定している。

 研究グループは県内各地の河川で、水に含まれるニホンザリガニの微量の遺伝子を調べ、基本データとなる生息域を特定した。その結果、ブナに代表される落葉広葉樹林内の川にのみ生息することが判明した。落ち葉を餌としているためとみられる。スギの人工林の川にはいなかった。

 県内の生息分布に気温や降水量といった気候変動の数値を加え計算してみると、27年後の50年には、県内のほとんどがニホンザリガニの生息に適さない地域となることも分かった。特に降水量の増加が影響しているという。

 調査では、似たような環境に生息するサワガニと比べてニホンザリガニの移動能力が非常に低く、生息域が拡大しにくいことも明らかに。このため気候変動や開発などで落葉広葉樹林が減ることにより、生息分布が一気に狭まる危険性が高いという。

 池田准教授は今年2月まで弘前大学農学生命科学部に准教授として在籍。弘大の学生だった木浪咲紀さん、日野沢翼さんが手がけた研究が今回の成果につながった。池田准教授は「日本固有種であるニホンザリガニを守ることで、他の生物も含め自然環境を守っていくという意識を高めていくことが大事」と語った。

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