学校検診で要治療の子 過半数が「未受診」 保護者の理解や助成が課題 長崎県保険医協会が調査

 長崎県保険医協会(本田孝也会長)は18日、県内の小中高、特別支援学校の計610校を対象に学校健診後の治療の有無をアンケートした結果を公表した。健診種別ごとの調査は5年前に始めて3回目。治療が必要な児童生徒の過半数が「未受診」という実態に今回も変化はなかった。
 アンケートは1~2月に実施し、167校から回答があった(回答率27.4%)。「要受診」とされた児童生徒のうち未受診の割合(人数)は▽歯科57.7%(5799人)▽眼科60.6%(263人)▽耳鼻科・聴力検査62.4%(741人)▽内科55.5%(382人)。いずれの割合も過去2回と大きな増減は見られなかった。
 未受診の要因として関連が深いと思われる家庭状況について質問(複数回答可)したところ、「保護者の理解不足」が67.9%でトップ。「経済的困難」が33.6%で続いた。これについて同協会は「行政の経済的な支援によって保護者の理解も促進される」としている。
 自由記述によると、「耳垢栓塞(じこうせんそく)(耳垢などが詰まる状況)は『親が耳そうじすればいい』と言われる」「何度も促すがスルーされる」など保護者に治療の必要性を認識してもらえない学校側の苦労がうかがえる。「町内に眼科がなく受診が滞る」「島外受診時の交通費の助成(が必要)」など離島の事情も。「肥満の児童が多い。衣服の着脱が難しい子、同じ姿勢を保てない子がいる。いずれも受診していない」という意見もあり、同協会は新型コロナウイルス禍で肥満が増えたとみる。
 こうした状況を受け、医療関係者らでつくる団体「こども医療長崎ネット」(本田孝也代表世話人)は18日、県の子ども医療費助成制度の拡充などを求める要望書を大石賢吾知事宛てに提出。高校生までの「自己負担ゼロ」を求めた。
 県と県内21市町はこれまで徐々に制度を拡充し、助成対象を高校生まで広げた。だが、県庁で会見した本田氏は、貧困により治療を受けていない児童生徒が多いとして「せめて経済的理由で治療を受けられない人がいないように行政は対応すべきだ」と話した。

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