史上初のトップ10入りも 46歳クラブプロの指導哲学とは?

クラブプロ唯一の予選通過(Scott Taetsch/PGA of America via Getty Images)

◇メジャー第2戦◇全米プロゴルフ選手権 3日目(20日)◇オークヒルCC(ニューヨーク州)◇7394yd(パー70)

トッププロだけが出場を許される「全米プロ」は全156人のうち、主催者の全米プロゴルフ協会(PGAオブ・アメリカ)所属のクラブプロ20人が参加する。賞金で生活するツアープロとは異なる、ゴルフ場に所属するティーチングプロらにとっての晴れ舞台。唯一予選を通過した46歳のマイケル・ブロックはムービングデーの主役の1人だった。

ミズーリ大セントルイス校を卒業後、カリフォルニア州のゴルフ場に勤務。2012年、PGAオブ・アメリカに入会した。現在はロサンゼルスの南にあるアロヨ・トラブコGCというコースに所属している。普段の打席でのレッスン料は45分で125ドル、9ホールのラウンドレッスンで500ドルだという。

本大会は出場5回目の常連。2007年と18年の「全米オープン」を含めキャリアで7回目のメジャーとなった今回、初めて決勝ラウンドに進出した。しかもイーブンパー10位の好位置で。サプライズはそして、3日目も続いた。降りしきる雨に負けずこの日も「70」。2つ落として迎えた後半14番から2連続バーディを奪うと、大声援を気持ち良さそうに浴びた。

同じ組でプレーしたジャスティン・ローズ(イングランド)は「中盤から僕たちは互いを応援し合って、ギャラリーも彼を応援した。みんなが楽しんだ。彼と一緒にプレーして力が湧いたんだ」と、自身は2アンダー5位につけたラウンドを振り返った。4つ年上のクラブプロは明かす。「実は最初の3ホールはロージー(ローズの愛称)の顔を見られなかった。私はずっと彼の大ファンなんだ」

42歳の元世界1位と46歳のクラブプロが同組でそろって好プレー(Scott Taetsch/PGA of America via Getty Images)

周囲の勧めでツアーの予選会を受けたこともあったが、心からツアープロになりたいと考えたことはなかった。「住宅ローンを払うためにパットを打つなんて僕にはできない」。大好きなゴルフを通じて家族と長い時間を過ごす今の生活を好んできた。2人の息子もゴルファーで、6月の「全米オープン」(ロサンゼルスCC)の予選会には長男と一緒に出る。

「人にはそれぞれに合った、違う教え方ある」というのが指導哲学。「古くはアーノルド・パーマーの『自分のスイングをしよう』という教えが私にとっては大きかった。ひとつの教え方ではなく、その人ができること、できるようになることを指導している。タイガー(ウッズ)やロリー(マキロイ)のスイングなんてどんな生徒にも教えないよ」。もちろんプロゴルファーにもそれぞれの生き方がある。

通算イーブンパーの8位は首位のブルックス・ケプカと6打差。これまでにトップ10に入ったクラブプロはいないが、狙うのは新記録にとどまらない。「私はロージーが大好きだ。でも彼らと戦えるとも思っている。あした、フェアウェイに打ち続けられれば、3アンダー、4アンダーも出せると思うんだよ」とプライドをのぞかせた。(ニューヨーク州ロチェスター/桂川洋一)

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