2戦連続の接触リタイアに呆然。大湯都史樹が“あのタイミングでいきたかった”背景/第4戦オートポリス

 41周レースの25周目までピットインを引っ張った大湯都史樹(TGM Grand Prix)は、フレッシュタイヤに履き替えると猛然とスパートを開始した。

 28周目には自己ベストとなる1分31秒430をマーク。その勢いのまま、序盤にピットインしていた牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)を、続く29周目の1コーナー進入で攻略する。目の前には、阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)のマシンが迫ってきた。

 第2ヘアピン立ち上がりから鋭く加速した大湯は、下りストレート先の右高速コーナー進入でアウトから並びかけるが、両車はサイド・バイ・サイドの状態から接触。大湯はコース外にマシンを止め、阪口もマシンに傷を負ってしまった。

 コースサイドで頭を抱え、座り込む大湯。野尻智紀(TEAM MUGEN)と接触しレースを終えた前戦鈴鹿とは異なり、大湯に対して「危険なドライブ行為」として、競技結果に30秒加算、ペナルティポイント1点という裁定が下った。

 とはいえ『2戦連続で接触&(決勝)ノーポイント』という事実は変わらない。レース後のミックスゾーンに、大湯はまたしても落胆を隠せないといった様子で姿を見せた。

「リタイアはつらいですね。裁定としては僕にペナルティなのですが、本当にタイミングで当たってしまったというか……」と接触を振り返る大湯。

「当たった瞬間は、(ステアリングを)切り込んでるどうこうではなく、(サイドスリップが効いて)吸い付いた状態だったと思うんですよ。吸い付いて、当たって、こういういう(右を向く)状態になって。僕はもちろん寄せるつもりもなかったですし、当たった瞬間はブレーキ(を開始)した直後でまだ曲げるタイミングでもないので、個人的にはもう少しスペース作って欲しかったなと思うところもあります。後ろから仕掛けている僕が、リスクというか当たった場合の責任は負わなくてはならないのですが……」

 レース後、とある関係者は「あそこで行かなくても、もう少しチャンスを待てばよかったのに……」と漏らしたが、大湯にはあのタイミングで阪口に仕掛けたかった、いくつかの“背景”があった。

2023スーパーフォーミュラ第4戦オートポリス 大湯都史樹(TGM Grand Prix)

■“美味しい”5周

 発端のひとつは、前戦の鈴鹿にまで遡る。前述のとおり野尻とのクラッシュでレースを終えたが、そのマシンを修復する際に、ちょっとした不具合が発生していたようだ。それが判明したのは、Q1落ちを喫したオートポリスの予選が終わってから。チームは予選後にマシンをくまなくチェックし、日曜朝のフリー走行2回目では乗り始めてすぐに好感触が得られるところまで復調してきていた。

「タイヤを4輪うまく使えるように仕上げていき、ようやく普通に走れるというか、むしろ(日曜)フリー走行の段階ではいままで一番良いロングの雰囲気を出せていました」と大湯。

 これで決勝に向け不安材料も消えた大湯は、1周目にいきなり6ポジションアップ。その後は「並のペース」だったというが、上城直也エンジニアによれば「昨年のここでのレースを考えても、ペースがよければ基本は引っ張る方向だった」ため、ライバル勢がピットに向かっても、大湯はコース上にステイを続けた。

「本人はもう少し伸ばしたかったような雰囲気でしたが、タイム的にも落ちてきてましたし、先にピットインした組がだいぶ上がってきていた」(上城エンジニア)ため、25周目に大湯をピットに呼び戻す。そして、目論見どおりのスパートをかけようとしていた。

 早めにピットに入った陣営に対して、フレッシュタイヤの高グリップを活かして勝負をかけやすいのは「5周くらい」と大湯。「その周回の中で追い上げていきたいという気持ちがありました」。

 さらに、この日の53号車は「どちらかというと、(タイヤが)フレッシュなところにクルマが合っていた」という。

 鈴鹿での無念を取り戻したいという思い、日曜朝からの復調と成功したスタートダッシュ。そんな“積極性”を後押しする背景に加え、もっとも“美味しい”5周、そしてフレッシュタイヤとのマッチングが良かったマシン。これらの要素がすべて絡み合って、あの29周目の接触に向かってしまったのかもしれない。

 2戦連続で無念の結末となった陣営にとって幸いだったのは、決勝レースペースにおける手応えが得られたこと。

「鈴鹿とは全然違うものを今回の決勝では試せたし、それの良さも見えました。まだ全然足りていないところもありますけど、並のペースでまず走れたというのがまずは大きいかなと思います」と大湯。上城エンジニアも「クラッシュで終わりましたが、その過程ではかなりいいものが見つかった」と語る。次戦以降、「取り返さなければ」というプレッシャーはますます高まることが予想されるが、そのなかで結果を残すことができるかどうか。大湯とTGMにとって、“試される”ラウンドが続くことになる。

2023スーパーフォーミュラ第4戦オートポリス 大湯都史樹(TGM Grand Prix)

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