【ミャンマー】中ロなど5カ国が武器供給と非難、国連報告[政治]

ミャンマーの人権状況を担当する国連人権理事会のアンドリュース特別報告者は、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)開催前の17日、ロシアや中国など5カ国がミャンマー国軍に武器(兵器)などを輸出していると非難する報告書を発表した。2021年2月の軍事クーデター後に総額10億米ドル(約1,380億円)超を供給したと試算。武器禁輸を徹底するよう訴えた。

主要な供給国として、ロシア、中国(香港を含む)、シンガポール、インド、タイを挙げた。輸出額はロシアが4億600万米ドルで最も多く、中国が2億6,700万米ドル、シンガポールが2億5,400万米ドルで続いた。

武器供給に関連する企業数はシンガポールが138社と最多で、中国が41社、ロシアが28社と続いた。

ロシア、中国、インドの3カ国の企業については、ミャンマー国軍と直接的に武器類を取引する傾向があるという。シンガポールとタイは政府・政府系企業が武器供給に関与しているとの証拠がないが、軍事転用可能な部品や原材料などの供給の経由国として機能していると指摘している。

軍需物資の内訳は、武器・部品が6億100万米ドル、軍事転用可能な部品が1億8,000万米ドル、武器製造に必要な設備が8,700万米ドル、原材料が7,700万米ドル、軍事インフラが6,100万米ドル。

具体的な供給品目は、戦闘機やヘリコプター、偵察・攻撃用無人機(ドローン)、レーダーなどを含む。

シンガポール外務省は19日、報告書に対する声明で、国連総会決議に基づき、ミャンマーへの武器供給防止に向けた活動に取り組んできたと表明した。法律に反する個人または団体の取り締まりを進める方針を示した。バラクリシュナン外相は2月、国会でミャンマー国軍への武器販売を長期にわたって禁止していると答弁していた。

■包括的な制裁適用を

アンドリュース氏は「兵器も資金も異なる主体を通じて(ミャンマーへと)流れ続けている」と訴えた。国際社会の足並みの乱れにより抜け穴が存在し、武器禁輸措置が機能していないとみており、包括的な制裁が必要だと訴えた。

武器そのもののみならず、国軍への資金の流入も問題視している。国軍への資金の流れを絶つための具体的な課題として、◇欧州連合(EU)のみがミャンマー石油ガス公社(MOGE)を制裁対象としている◇兵器調達の決済窓口とされているミャンマー外国貿易銀行(MFTB)が国連加盟国の制裁対象に入っていない——を挙げた。国軍が仲介会社や関連会社をフロント企業として用い、制裁を逃れているという。

アンドリュース氏は4月に日本を訪問し、G7が協調してミャンマー軍政に圧力を強めるよう訴えていた。

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