【インド】アマゾン傘下、1兆ルピー投資[IT] クラウド需要の増加に対応

需要増に対応するため、AWSはインドのクラウド関連インフラに1兆560億ルピーを投資する(AWSのホームページより)

米アマゾン・コム傘下でクラウド事業を手がけるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は18日、データセンター増設などインドのクラウド関連インフラに対し、2030年までに1兆560億ルピー(約1兆7,600億円)を投資すると発表した。従来の先行投資と合わせると、インドでの累計投資額は30年までに1兆3,650億ルピーに達する見通し。インドを中心とするクラウド需要の増加に対応する。

今回の大型投資は、データセンターの建設や維持、運営に関する16~22年の投資3,090億ルピーに続くもの。AWSはインド西部ムンバイ(16年開設)と南部ハイデラバード(22年11月開設)にデータセンターをすでに1カ所ずつ保有。両データセンターは高い強じん性や可用性(継続してシステムを稼働できる能力)、安全性を備え、AWSの良質なデジタルサービス提供の基盤になっている。

AWSによると、インドでは、政府機関や医療機関をはじめ、商用車メーカーのアショク・レイランド、アクシス銀行、生保HDFCライフ、時計・宝飾品メーカーのタイタンといった大企業、その他にも中小企業、スタートアップ、NPOなど、数十万の顧客がAWSのデジタルサービスを利用している。

16~22年の投資は、顧客のイノベーション加速はもちろん、企業顧客の販売促進に寄与した。また、年平均で3万9,500人超分の雇用を支援し、400万人超にクラウド関連の技術トレーニングを提供。今回の大型投資も、建設や設備保守、通信など年平均で13万1,700人超分の雇用支援を見込んでいる。

AWSの南アジア担当幹部、プニート・チャンドク氏は発表資料を通じ、「AWSは16年以来、インドのデジタルトランスフォーメーション(DX)に貢献してきた。今回の大型投資も、デジタル大国への道を進むインドをサポートするだろう」とコメント。ラジープ・チャンドラセカール閣外相(電子・情報技術担当)も同資料で「インドのデジタル経済を確実に活性化させるだろう」と言及し、大型投資を歓迎した。

■海底ケーブル敷設も視野か

IT業界の関係者によると、今回の大型投資は、インドだけでなく、周辺国を含めたデジタル需要に対応する狙いがあるとみられる。さらに、投資規模を踏まえると、インド国内のデータセンター増設だけでなく、インドのデータセンターと、アフリカなど他地域のデータセンターをつなぐ海底ケーブル敷設関連を含んでいる可能性があるという。

米系不動産サービス大手のジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)の報告書によると、インドのデータセンターの電力容量(サーバーなどIT機器に供給できる電力容量)は、21年に565メガワットだったが、24年までに2.4倍の1,369メガワットに拡大する見込み。24年までの3年間の年平均成長率(CAGR)は34%、データセンターを運営する各社の総投資額は55億米ドル(約7,600億円)に上るもようだ。

■専門家「AI利用が増える」

調査会社のIDCインディアのアソシエイト・リサーチ・ディレクター、ラジブ・ランジャン(Rajiv Ranjan)氏はNNAの取材に対し、「多くの先進国が景気減速の懸念に直面する中、インドは経済発展が引き続き期待されている。人工知能(AI)関連を中心に、政府や企業はクラウドをさらに利用するだろう」と答えた。

日系企業では、NTTグループがインドにデータセンターを10棟以上保有し、さらなる増設に意欲を示している。今回の大型投資に伴い、この先、AWSからセンター関連の発注を受ける展開も想定される。

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