G7広島サミット 核軍縮の重要性 国際社会に示す 長大レクナ・吉田センター長インタビュー

吉田文彦氏

 被爆地広島で開かれた先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)。長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)の吉田文彦センター長に成果や課題を聞いた。

 G7首脳らが原爆資料館を訪れ、「(広島と長崎の恐怖と苦しみを)繰り返してはならない」(英国のスナク首相)などと芳名帳にメッセージを記した。核軍縮の重要性を国際社会に示す歴史的な場となった。
 核軍縮はリーダーの役割が大きい。被爆者との面会などを通じ広島で感じたことを持ち帰って政策にどう生かすかが重要だ。長崎の被爆者との面会はなかったのは残念だが、これまでの広島と長崎の訴えがなければ実現できなかった。一つの到達点と誇っていい。
 一方、発表された「核軍縮に関する広島ビジョン」は従来の政策の延長でまとめたという印象。大きな方向性を示す中身になっておらず、前進がなかった。
 落胆したのは「核兵器の使用や威嚇は許されない」を巡る表現だ。昨年11月にインドネシア・バリ島であった20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で採択された首脳宣言を踏まえたものだが、同宣言では主語を限定していない。だが今回は都合よく読み替え、ロシア批判に使っている。
 一方、「核兵器は防衛目的のために役割を果たす」とした表現では、自分たち(G7)は核抑止を維持した形で核廃絶を目指すとしている。核戦争は起きないという前提で、既存の取り組みを積み重ねていけば、たどり着くという予定調和論になっている。ロシアのウクライナ侵攻で核戦争の危機に陥っているのは核兵器が存在するからで、その問いかけへの答えを示せていない。
 核兵器禁止条約にも触れていないが、G20の中には条約を支持する有力な国もある。G20との連携を考えた時、条約を無視する形では連携は難しい。「条約発効を歓迎する」といった文言は盛り込めたのではないか。

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