SNSの流行で価格が高騰する暗号資産「ミームコイン」。一攫千金かハイリスクか、投資家はどう扱うべきか

最近になって「ミームコイン」というSNSでの流行などによって価格が高騰する暗号資産が再び注目を集めています。2021年には柴犬をモチーフとした「ドージコイン」がイーロン・マスク氏の支持を受けて大きく値上がりしましたが、今回は「ペペコイン」というカエルのキャラクターに代表される銘柄が人気となっています。

ペペコインは2023年4月に発行が始まり、5月6日にはスタートから約50倍以上の価格まで高騰しました。しかし、そこから約60%下落し、まさにジェットコースターのような値動きを見せています。このような投機色の強いミームコインの盛り上がりを見て、一攫千金を狙えると考えるか、投資リスクが大きいと考えるかは人によって異なるでしょう。

ミームコインブームはこれまでも暗号資産市場で度々起きており、今後も定期的に発生するでしょう。そこで今回は、投資家の立場としてミームコインをどのように捉えるべきか、ミームコインが暗号資産全体の相場に与える影響についてお話します。


ミームコインは宝くじのようなもの?

ミームコインブームには米国のインターネット文化が大きく関わっています。ドージコインの柴犬キャラクターも、ペペコインのカエルキャラクターも、元々はRedditや4chan、Tumblrといったネット掲示板などで人気を博したキャラクターです。これらのミームキャラクターは、キャッチーで面白おかしな画像とともにネット民同士のコミュニケーションを助長し、笑いの対象として一大ブームになりました。

その名残からインターネット上にはミームを中心とするコミュニティがいくつも存在しています。それが暗号資産と合わさることによってミームコインブームは沸き起こっています。何か特別な用途がなくても、現象そのものが面白いという理由だけでミームを信仰する人たちがコインを買い漁り、その流行とともに価格が高騰します。逆に、その流行が過ぎ去ってしまえば価格も暴落します。

ミームコインは株式のように割安割高の理論に基づいて売買されるものではありません。インターネットやSNSでの話題性に従って価格が大きく変動するため、投資対象としては投機性が非常に高いと言えます。一攫千金を狙える大きなリターンをもたらす可能性がある一方で、一瞬の値動きで投資したお金を大幅に失うリスクもあります。

日本では一部の暗号資産取引所でミームコインの代表格であるドージコインを取り扱っていますが、投資家としてミームコインの流行に上手く乗っかるのは相当な労力がかかるでしょう。米国のソーシャルメディアの情報をキャッチし続けなければなりません。もし良いタイミングで買えたとしても流動性が低いために売りたい時に売れない可能性もあります。

ミームコインは多くの人にとっては宝くじのようなものとして捉えるべきでしょう。今回のようにミームコインブームが来た時には、いくつものコインが新しく発行されます。そのうちの一つに、もしどこかのタイミングで大きく値上がりしたらラッキーというくらいの気持ちで、小さいお金を投じるのは良いかもしれません。

ミームコインブームが暗号資産相場に与える影響

ミームコインは大きなリターンを期待するリスク選好の投資家を惹きつけます。一つのミームコインが大きく値上がりすると、後続して発行されるミームコインの値上がりを期待してさらに多くの投資家が押し寄せます。こうしたミームコインブームは他の暗号資産に対する投資家の期待も高め、暗号資産全体の価格上昇を引き起こすことがあります。ドージコインが高騰した2021年4月には、ビットコインも連れ高し、当時の最高値を記録しました。

しかし、ミームコインブームによる価格上昇は必ずしも暗号資産市場の健全な発展を意味するものではありません。ミームコインはそれぞれが短期的なバブルを形成する可能性を秘めています。投資家の期待のみによって価格が高騰した後には、バブルの崩壊とともに大きな下落を引き起こします。この時には市場全体が投機に傾いているため、ビットコインを含む暗号資産の多くが揃って下落しやすくなります。

暗号資産投資家はミームコインブームを上手く利用することで短期的に大きな利益を得ることができるかもしれません。例えば、ドージコインが流行したタイミングでは、柴犬コイン(SHIB)など似たように犬をモチーフとしたコインが揃って値上がりしました。SNSにおけるミーム情報を追う中で一つのトレンドを掴むことができれば戦略的にリターンを狙うこともできます。

一方で、これから暗号資産投資を始めようという人にとって、ミームコインの存在は「暗号資産はやはり投機(ギャンブル)に過ぎない」というネガティブなイメージを強めるものかもしれません。規制当局としても投資家保護の観点からは暗号資産取引所におけるミームコインの取扱いについて適切なルールを定めることが求められるでしょう。

しかし、暗号資産に限らず、SNSなどによる金融市場への影響は今後も大きくなることが予想されます。投資家として価格形成の要素が多様化していることを認識しつつ、きちんと情報収集した上で投資判断を行うことが何より重要です。


いつも読んでいただき、誠にありがとうございます。これまで約2年間、暗号資産の世界を一緒に学び、探求してきたことに深く感謝しています。今回で私の寄稿は最後となりますが、これまで共有した知識が皆様の暗号資産への理解と情熱を深める一助となれば幸いです。今後も暗号資産の世界は進化し続けますので、引き続き情報収集と学びを続けていってください。本当にありがとうございました。

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