少子化と混同してはいけない…リプロダクティブ・ヘルス/ライツの本当の意味

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。5月12日(金)放送の「New global」のコーナーでは、“リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)”について取り上げました。

◆少子化に高齢化…中国も日本を追随

中国・北京の裁判所で、婚姻中の夫婦にのみ認められている卵子凍結を独身女性への適用を求める裁判の控訴審が行われました。北京の病院で卵子凍結を断られた30代の女性は、2019年に病院を提訴。第一審で敗訴となりましたが、「簡単に諦めることはできない」と控訴。中国では女性の権利に対する関心が高まっているとともに、出生率の低下が懸念されており、この裁判は広く注目されています。

キャスターの堀潤は、性と生殖に関する健康と権利は「新しい人権」であるとし、この報道には2つの意味があると主張。ひとつは中国人民が権利拡大を求める裁判を起こすようになったことで「中国も変わってきたんだな」と感想を述べ、もうひとつは中国でも人口減少が始まってきたことで「これは世界が注目している」と話します。

中国の人口は14億人を超えていますが、前年比は85万人減。出生数も956万人と初めて1,000万人を割り、出生率は建国以来過去最低の6.7。少子化が叫ばれる日本が6.4であることからも、中国も深刻な状況になりつつあることがうかがえます。

◆リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは?

そうした状況のなか、今回、堀が注目したのは"リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)”なる言葉。これは1994年にエジプト・カイロで開催された「国際人口開発会議」で提唱された概念で、性や身体のことを自分で決め、守ることができる権利のこと。

日本でも少しずつ浸透してきており、東京都の小池知事は今年、健康な女性の卵子凍結に関する助成を手厚くすると宣言。その予算を東京都の予算に組み込んでいますが、堀は「若干、違和感がある」と一連の動きを疑問視。「少子化、国力を維持するためにいかに子どもを増やすかという話のなかにこのリプロダクティブ・ヘルス/ライツを置いて本当にいいのか」と危惧します。

グローバルヘルスが専門で、まさにこの分野に関わるHealth for all.jp代表の茶山美鈴さんも堀に同意。リプロダクティブ・ヘルス/ライツについて「新興国で女性の権利が軽視され、子どもを強制的に産まされたり、若くして結婚させられることに対して、そういうことはやめましょう、教育を普及しましょうと言われていた権利」と補足しつつ、「それがいまや、例えば先進国での女性の働き方に関して、女性がどんな道を選ぶのかということで持ち出され、日本では少子化対策の一環で持ち出された」と苦言を呈します。

そして、この言葉自体が世間に広がるのは良しとしながら「これと少子化は本来別で話すべきこと。ただ子どもを産むための権利ではなく、女性が産まない権利、子どもを産まずにキャリアを追求する権利を含めて議論していかなくてはいけない」と指摘。東京都の女性は素晴らしいと称えながらも、より一層の議論を求めます。

ドイツ公共放送プロデューサーのマライ・メントラインさんは「こういう話を聞くと、子どもを産まなくてはいけないのかなという圧を感じる」と印象を述べつつ、「今後は子どもをどう産むのか、どんな条件があれば子どもを産んでいいのかといった情報が過多になっている」と話します。

続けて、「昔はもう少しシンプルだったと思うが、今は条件や産み方まで提示され、女性として逆に迷ってしまうし、ストレスを感じる」と率直な感想を口にします。

ジャーナリストの春川正明さんは、学校での教育を強化するよう切望。「特に男性はほとんど教えられていない」と現状を嘆き、「子どもたちが性と生殖に関する知識があまりにないので、そこはしっかりと教育すべき」と訴えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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