静岡県伊東市では、認知症への取り組みに力を入れています。特に軽度の認知症の人や認知症への不安を抱えている人に向け、生きがいややりがいを持ち続けられる地域を目指したプロジェクトを立ち上げました。
農作業に汗を流すのは、最近物忘れが気になった人や軽度の認知症と診断された人たち。週に一度、野菜作りをするために伊東市内の畑に集まります。
Q.さすがの手つきですね。昔からやってたんですか?
「やってました」
Q.手つき違いますね?
「いや格好だけです。恥ずかしい」
これは全国的にも注目を集めるプロジェクト「富戸ケアファーム」の一環。認知症を専門とする医師や研究機関が参加し、これまであまり支援が行き届いていなかった軽度の認知症の人へのケアをまちぐるみでします。
伊東市内の介護施設の代表・髙田仁里さん。このプロジェクトの立ち上げ人です。
<NPO法人「えん」髙田仁里代表>
「認知症の初期の段階であったり、UCI軽度認知障害、認知症の前駆段階の方々が物忘れに不安を感じていたりとか、家族が不安を感じていたりとかそういった方々が参加して、楽しく自然の中で体を動かして五感を刺激しながら仲間づくりも一緒にしてしまう。仲間をつくることで精神的なケアも一緒にしてしまうというようなそんな目的になっています」
認知症の疑いや軽度の認知症と診断されてから実際に介護を必要とするまでの期間は、平均すると2年間といわれています。この2年間は「空白期間」と呼ばれ、社会的な孤立や生活の質の低下が進む可能性が高く、全国的な課題となっています。
伊東市が取り組む「富戸ケアファーム」は、この「空白期間」のケアに特化した取り組みです。
<伊東市 高齢者福祉課 河野望さん>
「今は意識的につながりを持たないと人とのつながりって築くことができないというのが実際のところあると思うので、それをこういった活動の中で、自然と関係性を築いていって継続するっていうのは、すごくいい取り組みなんじゃないかなって思っています」
<参加者>
「みんなでやるのがいいんですよ」
「笑顔でありがとうが一番だよね」
「みんなで農作業やると気軽に話せますよね」
「仕事してても疲れないね」
「楽しい。嫌いじゃない。こういうのあると全然違うね」
プロジェクトを立ち上げた髙田さんは、「富戸ケアファーム」は認知症の人と地域の在り方のモデルケースになるはずと考えています。
<NPO法人「えん」髙田仁里代表>
「いまの時代は年を重ねていけば認知症になるのは当たり前なんだよと。そういう時代になってきているんですね。自然と一緒に作業する、助け合うとか一緒に何かやるというのは当たり前の空間だと思うので、豊かな人間関係を広げるモデルとしてこういった場所ができていけばいいかなと思っています」
まだネガティブなイメージが根強い認知症。このプロジェクトは認知症を理解し、認知症への不安に寄り添う地域づくりを目指しています。