大麻取締法違反で摘発さえる若者が後を絶たない。2022年の摘発者71人のうち、10~20代が占める割合は7割に上る。大麻が覚醒剤など他の薬物に比べて比較的安価で入手できることなどを背景に、近年は低年齢化が加速。中には交流サイト(SNS)など、インターネットを通じて密売人と接触し、大麻を購入するケースも目立ち始めている。
同法違反の摘発者は05~17年の間、50人未満で推移してきたが、18年(52人)に初めて50人を超えると、その後も増加傾向が続き、21年には過去最多の85人に上った。22年はやや減少して71人だったが、ここ数年間は「高止まり」(県警)の状況が続いている。
茨城県警薬物銃器対策課によると、同法違反による摘発者のうち、7割超は10~20代。20年には15歳の摘発もあった。30~40代の摘発が多い覚醒剤とは対照的だ。
大麻が若者の間で広まる背景の一つは価格の安さ。1グラム当たりの末端価格は、覚醒剤の約6万2千円に対し、大麻は約5千円と大幅に安い。同課は「若者が入手しやすいことも(増加の)要因ではないか」とみている。
近年は、大麻購入者がSNSを通じて密売人と接触するケースも目立つという。SNS上では、密売人が「20個限定。配達も可。ダイレクトメッセージお待ちしてます」などと「宣伝」。匿名性の高い「テレグラム」のような通信アプリのIDを載せる投稿も多い。
警察庁の統計によると、22年10~11月に同法違反(所持)で摘発された911人に対する調査で、大麻の入手先を知った方法は10代で「インターネット経由」が約43%に上った。
大麻は「ゲートウエー(入り口)ドラッグ」と呼ばれ、より強い作用を求めて他の違法薬物に手を出す危険があることで知られる。
若者の大麻使用について、同課は「大麻の有害性を正しく認識できていない」と指摘した上で、「より重大な犯罪につながる恐れがある」と強調した。
県警への相談窓口は薬物乱用110番(電)029(301)7979。
■相談できる仕組み必要 県立こころの医療センター・小松崎智恵医師の話
大麻を使用すると、幻覚、妄想、認知機能の低下、無気力といった症状が出る恐れがあり、依存性もある。大麻などの依存症は性格や意思の問題と誤解されがちだが、実際にはそうではない。ましてや快楽や刺激を求めて使っているのではなく、人間関係などによる目の前の苦しさや不安を和らげようとして使用し、依存する。診察をしていて、新型コロナの影響で行き場のない人が増えた印象を受ける。大麻の有害性を知らせることと同時に、苦しさを抱えている人が相談できる仕組み、体制が必要だ。