社説:コロナ定点把握 分析し判断基準を示せ

 新型コロナウイルス感染者数の国の集計方法が、特定の医療機関が患者数を報告する「定点把握」に切り替わり、先週末に初めて発表された。

 厚生労働省が月曜から1週間の全国感染者数を、翌週の金曜に公表する。8~14日の全国の感染者数は1万2922人で、1医療機関の平均は2.63人。前週の感染者数を定点把握に換算した1.80人という参考値も示しており、「流行は緩やかだが、拡大する局面にある」という。京都は同2.03人、滋賀は同1.82人だった。

 感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザ並みの5類に移行したのに伴い、集計方法も同じ定点把握に合わせた。

 だが、これまでの毎日集計して公表する「全数把握」に比べ、感染動向をとらえる頻度や精度は落ち、流行に入ったかどうか判断が明確ではない。流行「第9波」が懸念される中、感染拡大の兆候を的確に見極められるかが課題だ。

 インフルエンザでは、感染者数が定点把握で10人を超えると「注意報」、30人以上で「警報」を発表している。しかし新型コロナはデータの蓄積がなく、現時点では導入が難しいという。京都府の西脇隆俊知事は感染動向を測る指標がなくなったことについて、「国が一定の基準を示すべき」と指摘する。

 新型コロナの感染力は依然強いとされる。1週間遅れで週1回の情報では、医療現場の実情とずれが生じてしまうとの懸念が高まる。川崎市では各医療機関から感染者数の報告を受け、独自に毎日集計して公表するシステムを取り入れている。

 5類移行によって、感染対策は個人にゆだねられるようになった。感染しても診断を受けない人が増え、数字に表れない感染者は多いとも見られる。ならば個人が判断できるよう分かりやすい情報提供が欠かせない。

 国や自治体は、公表されている入院患者数や学校の欠席者数情報など、複数のデータで補完しながら分析し、基準を検討すべきだろう。

 今国会では、感染症対策を担う専門家組織「国立健康危機管理研究機構」を新設する法案が、審議されている。米国で感染症対策を担う疫病対策センター(CDC)をモデルとした組織だ。設置は2025年度以降というが、悠長にすぎないか。

 省庁の司令塔として秋に発足する「感染症危機管理統括庁」と合わせ、体制整備を急ぎたい。

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