クラッシュ多発の荒れた週末は、前戦同様に好調ウィル・ブラウンが2勝を獲得/RSC第4戦

 豪州大陸最高峰シリーズ、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップの第4戦『ネッドウイスキー・タスマニア・スーパースプリント』が5月19〜21日にシモンズプレイン・レースウェイで開催され、ライバルが接触やアクシデントで好機を失うなか、今季好調を維持するコカ・コーラ・バイ・エレバスの一角、ウィル・ブラウン(エレバス・モータースポーツ/シボレー・カマロZL1)が週末2勝を獲得。勝利を挙げた初代TCRオーストラリア王者に挑戦するかのように、カテゴリー昇格2年目を迎えるレッドブル・アンポル・レーシングの新鋭ブロック・フィーニー(トリプルエイト・レースエンジニアリング)が前戦同様に立ちはだかり、こちらも今季3勝目を飾っている。

 シリーズ恒例となるタスマニア島での週末を前に、ディフェンディングチャンピオンの“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トリプルエイト・レースエンジニアリング)が、NASCARカップシリーズ参戦を発表して話題を集めたパドックでは、同じくこの時点でドライバー、チームと両スタンディングでポイントリーダーに君臨するエレバス・モータースポーツも、近い将来の「北米詣で」を表明した。

 現在カイル・ブッシュらが所属するリチャード・チルドレス・レーシング(RCR)との協業や技術交流を見据えるチームは、イリノイ州のワールドワイド・テクノロジー・レースウェイ(WWTR)に向かい、第15戦『エンジョイ・イリノイ300・プレゼンテッド・バイ・ チケットスマーター』の現場を視察するプランを明かした。

「我々は数週間以内にそこへ行き、そこで“小規模な提携関係”にあるチームを訪問する予定だ」と語ったチームCEOのバリー・ライアン。「向こうにいる間にもう少し調査を行い、彼らがどのようにやっているかを見られるのは非常に素晴らしい機会だ。現時点の我々が、そこから得られるものはあまりないかもしれないが、プロのチームがどう仕事を進めているか、そこからは確実に何かを学べるはずさ」

 そのライアンが言う“小規模な提携関係”とは、かつてスーパーカーでエンジニア職を担ったアンドリュー・ディッキンソンの存在のことで、現在はRCRでカイル・ブッシュのクルマに携わっている。

エレバス・モータースポーツも、近い将来の「北米詣で」を表明。現在カイル・ブッシュらが所属するリチャード・チルドレス・レーシング(RCR)との協業や技術交流を見据える
この週末もドライバー、チームと両スタンディングでポイントリーダーに君臨するコカ・コーラ・バイ・エレバスが、FPからQFを席巻していく
陣営内対決を制し、まずはウィル・ブラウン(エレバス・モータースポーツ/シボレー・カマロZL1)が土曜のポールポジションを確保した

■「コクピットで本当に有頂天だった」と“トウ合戦”を制したブラウン

「我々はアンドリューを通じてRCRと多少のつながりを持っている。彼はカイル・ブッシュのクルマのエンジニアのひとりだからね。明らかに、ロードコースの内容は彼らにとって非常に重要だ……もし、ロードコースの攻略で彼らを助けることができれば、それはドライバーにとってもメリットになるだろうからね」と続けたライアン。

「それが我々の検討方法であり、ドライバーが右コーナーと左コーナーを繰り返す際に、何か良き方法を提示することができるかどうか、それを確認するために現地に向かう。NASCARではレースに勝つだけでシリーズに参加できる。だから“ロードコースの者”にとっては、本当に重要な点なんだ……」

 こうして始まった週末は、現シリーズリーダーでかつてはNASCARヘの挑戦を夢見て武者修行に出た経験を持つブロディ・コステッキ(エレバス・モータースポーツ/シボレー・カマロZL1)が、FP1とFP2で最速タイムを叩き出す。

 所属先が北米大陸への興味を公式に表明しただけに、自身の勢いを予選まで持ち越したかったコステッキだったが、そこへ立ちはだかったのが僚友ブラウンで、予選スーパーポールで4番手に終わったチームメイトを出し抜き、まずはブラウンが土曜レース1に向けたポールポジションを手にした。

「ポールを獲得できたのは素晴らしいことだった。ピットレーンではいくつかの駆け引きが行われていたからね」と、コース上での位置取りと“トウ合戦”を念頭に語ったブラウン。

「僕らはフォードの1台を巻き込もうとしていたが、彼らはプッシュバックしていて、そこに付き合ったら2周のアタックは間に合わないと思った。そこに幸運にも別のシボレー1台が登場し、牽いてもらうことができた。もうコクピットのなかで本当に有頂天だったよ(笑)」

 迎えた42周勝負のスプリント戦は、タイトル候補のコステッキがレース序盤に災難に見舞われ、2番手争いの渦中でオーバーテイクを決めたジャック・ルブローク(マット・ストーン・レーシング/シボレー・カマロZL1)にリヤからプッシュされ、ヘアピン進入でキャメロン・ウォーターズ(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)とヒット。これでステアリング系にダメージを負い、立ち上がりアウト側で失速する事態に。

 その余波で、後続からヘアピンをクリアしてきたチャズ・モスタート(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/フォード・マスタング)とフィーニーも行き場を失ってクラッシュを喫し、ランキング2位だったモスタートもここでレースを終えてしまう。

レース1でフロントロウに並んだジャック・ルブローク(マット・ストーン・レーシング/シボレー・カマロZL1)が混乱の引き金に
チャズ・モスタート(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/フォード・マスタング)とブロック・フィーニー(トリプルエイト・レースエンジニアリング)も行き場を失ってクラッシュを喫してしまう
アンドレ・ハイムガートナー(ブラッド・ジョーンズ・レーシング/シボレー・カマロZL1)は終盤の追い上げで2位表彰台を得た

■レース2では王者SVGがウォールに接触の波乱

 そんな混乱を尻目に、義務ピット後も悠々の首位クルーズを続けたブラウンは、後半スティントで迫ってきたアンドレ・ハイムガートナー(ブラッド・ジョーンズ・レーシング/シボレー・カマロZL1)やSVGらを退け、まずは今季2勝目を手にした。

「アンドレがハッスルしていたから、終盤はモジモジしたよ。僕はリヤタイヤを懸命に守ろうとしてたからね」と、最後の瞬間まで余裕はなかったと明かした勝者ブラウン。

「背後で選手たちが戦っているのを見て、ここに留まってアンダーカットを警戒しなければならないと思った。でもとてもうれしいよ、こうして2戦連続でまた勝てて最高だ!」

 明けた日曜も午前からレース2と3に向けた予選がそれぞれ実施されると、ここではマシン修復なったコステッキが鬼気迫る怒りのアタックを披露し、連続ポールポジションで前日リベンジのお膳立てを整える。

 すると、この日の最初のレース2も王者SVGがオープニングラップにデビッド・レイノルズ(グローブ・レーシング/フォード・マスタング)と絡み、ウォールに接触するという波乱で幕を開ける。これに乗じてブラウンが2番手に浮上し、まずは首位コステッキとのワン・ツー体制を固めていく。

 しかし何度もリードチェンジを繰り返したふたりの背後で、虎視眈々と逆襲の機会を伺っていたのがフィーニーで、こちらも前日もらい事故の借りを返すとばかりに、義務ピット作業の戦略でコカ・コーラ・バイ・エレバス艦隊を出し抜き、ライバル陣営に2秒近くの差をつけて今季3勝目を飾ってみせた。

 続く週末最後のヒートでもコステッキの受難は続き、スタートでフロントロウに並んでいた僚友が蹴り出し勝負で先行。そこからブラウンは重圧に耐え、ポジションを譲ることなくチェッカー。終盤で2位に浮上したフィーニーがふたたびコステッキに先着する結果となった。

 これでからくもランキング首位を維持したコステッキに続き、僚友ブラウンが2位に浮上した2023年のRSCシーズン。続く第5戦『ベター・ダーウィン・トリプルクラウン』は、6月16~18日にヒドゥンバレー・レースウェイで開催される。

王者シェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トリプルエイト・レースエンジニアリング)は、レース2のオープニングで姿を消すことに
レッドブル・アンポル・レーシングの新鋭ブロック・フィーニー(トリプルエイト・レースエンジニアリング)がレース2を制し、今季3勝目
レース3も2位のフィーニーを挟み、ブラウン、コステッキのふたりがポディウムに登壇した

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