<金口木舌>聞くに堪えぬ

 聞くに堪えないというほかない。「事実ではないが、可能性は否定できない」という臆測に基づく国会議員の質疑が故人の尊厳を傷つけた。所属政党の日本維新の会は、議員を参院法務委員から更迭した

▼まさに人権問題が問われている入管難民法改正案の審議である。病気のため名古屋出入国在留管理局の施設で亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんを議員が侮蔑した

▼いわく「ウィシュマさんはハンガーストライキで亡くなったのかもしれない」。支援者の「病気になれば仮釈放してもらえる」という一言によって「医師から詐病の可能性を指摘される状況につながった恐れも否定できない」とも。耳をふさぎたくなる

▼入管側はハンストも詐病も認めていない。「可能性」と断れば何を言ってもいいと考えたのだろうか。出入国行政の見直しという審議の本題から大きく逸脱している

▼ウィシュマさんは死後も人権を侵された。国の施設で外国人が命を失う不幸を起こしてはならない。議員には悲しみと反省がないのだろうか。

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