天国に捧げる総合優勝/ロリポップマンを務めたチーム代表/ポールを上回るファステストラップetc.【ニュル24時間Topics】

 5月20~21日、ドイツ・ニュルブルクリンクでADACトタルエナジーズ24時間レース(ニュルブルクリンク24時間)の決勝レースが行われ、フリカデッリ・レーシングの30号車フェラーリ296 GT3(アール・バンバー/ニッキー・キャツバーグ/デイビッド・ピタード/フェリペ・フェルナンデス組)が総合優勝を飾った。

 総合優勝を争うSP9クラスでは、エントリーした全32台の約半数がリタイアとなる過酷なサバイバルレースが繰り広げられた。レースを終えた日曜日のパドックから、各種トピックスをお届けする。

■亡きパートナーに捧げる「歴史的な」勝利

***フリカデッリ・レーシングチームのボスであるクラウス・アッベレンは、2年前に51歳で亡くなったパートナー兼コドライバーのサビーネ・シュミッツに、チームが待ち望んだニュルブルクリンク24時間の初勝利を捧げた。アッベレンは、「ビー(サビーネの愛称)、この勝利はあなたのためのものだ。あなたは天国から私たちへ、最大の成功を運び込んでくれた」と語った。

***アウディスポーツ、BMW、メルセデスAMG、ポルシェの経営陣は、21年ぶりとなるドイツ以外のマニュファクチャラーのマシンでの優勝を果たした、クラウス(・アッベレン)のフリカデッリ・レーシングにお祝いの言葉を述べた。アウディ・スポーツのカスタマーレーシング責任者であるクリス・ラインケは、「クラウスと彼のチームが、初のフェラーリでの参戦であったニュルブルクリンク24時間において、勝利を収めたことを嬉しく思う」と述べた。

***フェラーリのスポーツカーレースディレクターであるアントネッロ・コレッタは、この結果を「歴史的な」ものと表現し、「ニュルブルクリンク24時間というトップレベルで争われてきたレースにおいて、ドイツメーカーらの長年の覇権を奪取したことは、本当に信じられないほどの成果だ」と述べている。

***デビッド・ピタード、アール・バンバー、フェリペ・フェルナンデスがニュルブルクリンク24時間レースの勝者に名を連ねた。一方、ニッキー・キャツバーグは、2020年に成し遂げたローヴェ・レーシングでの優勝と合わせて、2回目となる勝利を収めた。

 バンバーは現在、主要な24時間レースの4つ(ニュルブルクリンク、ル・マン、スパ・フランコルシャン、デイトナ)のうちデイトナをのぞく3つのレースで勝利を収めている。彼は以前、2015年と2017年のル・マン24時間レースと、2020年のスパ・フランコルシャン24時間レースで優勝を飾っている。バンバーは、「あとはデイトナを残すだけだね。そのほかの24時間レースは勝利を揃えることができたのだから」と語った。

***フリカデッリ・レーシングは、2023年の2月に新しいフェラーリ296 GT3を受け取り、チームが所有していたポルシェ991.2とポルシェ911 GT3 Rの2台を他のチームへ売却した。今回のニュルブルクリンク24時間の週末の早い段階でアッベレンは、「他のレースでフェラーリ296 GT3を出場させるかどうかは、ニュル24時間を終えてから決める」と語った。フリカデッリは以前、デイトナ24時間、スパ24時間、キャラミ9時間にポルシェ911を使って参戦している。

2023ニュルブルクリンク24時間 30号車フェラーリ 296 GT3(フリカデッリ・レーシング)

■避けられたはずだったアウディの2台連続クラッシュ

***2台のシェーラーPHXから参戦したアウディR8 LMSエボIIは、フェニックス・レーシングの創設者でありチーム代表であるエルンスト・モーザーを称える『Danke Ernst』と記されたステッカーを貼って走った。

 モーザーは引き続きチームに関与するが、嘱託のアドバイザーとしてのみの活動に留まる。モーザーは、40号車アウディの最後のピットストップで、ロリポップマンを務めた。マイク・ロッケンフェラーを最終スティントに送り出したあと、彼はチームのクルーたちからスタンディングオベーションで迎えられた。

***1号車アウディと5号車アウディが夜間に同じ場所でオイルに滑って起こしたコースアウトは、コース上で互いに近いところを走っていたために発生したという。「両車の差は20秒だった」とモーザーは振り返る。

「最大の問題は1台目のクラッシュだった。ドライバーは最初に落ち着いて(コース上のオイルについての)情報を提供しなければならなかったが、これに少し時間がかかってしまった。クラッシュしたと反応があってから、2台目のアウディがクラッシュするまでの時間は、わずか5秒しかなかった。その時にはもう手遅れだった」

2023ニュルブルクリンク24時間 5号車アウディR8 LMSエボII(シェラー・スポーツPHX)

■左リヤタイヤのバーストが止まらないランボルギーニ

***マルコ・マペッリは、アプト・スポーツラインのランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2が3回目のタイヤパンクチャーを起こした後に、大幅なセットアップ変更を行ったと述べた。チームはタイヤの空気圧を「非常に高い」ものにし、キャンバー角を可能な限り減らした。マペッリは、「僕たちはそのようなローキャンバーのマシンを走らせたことがなかった」と語った。

 さらにマペッリは、アプトがランボルギーニとの最初のニュルブルクリンク24時間への準備において「素晴らしい仕事」をしたと付け加えた。ランボルギーニのファクトリードライバーであるマペッリは、プロジェクトに将来の可能性があるかという問いかけに、「僕はそう信じているよ。チームはランボルギーニとの参戦を継続したいと思っているはずだ。今回のレースでの仕事は本当にクールだったからね」と答えた。

2023ニュルブルクリンク24時間 27号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2(ABTスポーツライン)

■酸いも甘いも味わったBMW勢

***ローヴェ・レーシングのチーム代表であるハンス・ピーター・ナウンドルフは、BMW M4 GT3が夜間の走行でポジションを上げた理由を説明した。

「これはターボでは自然なことだ。気温が下がることで、燃焼室内の圧力が良くなるのだ。これは標準的なことだし、スパでも同じことが起きる」

***102号車BMWを走らせたワーケンホルスト・モータースポーツは、トップ予選での事故から修復を経て、決勝レースでは力強い走りを見せたが、トーマス・ノイバウアーがバックマーカーをパスする際にマシンが接触。その結果、オイルと冷却水のラインを損傷し、リタイアとなった。

2023ニュルブルクリンク24時間 102号車BMW M4 GT3(ワーケンホルスト・モータースポーツ)

■予選ポールタイムを上回る20号車フェラーリのファステストラップ

***総合優勝を果たしたフリカデッリ・レーシングのパートナーであるリナルディ・レーシングは、同じくメンテナンスを担当したヴォッケンシュピーゲル・チーム・モンシャウの20号車フェラーリでも総合9位を獲得し、SP9プロ・アマクラスで優勝を収めた。

***20号車フェラーリをドライブしたダニエル・ケイルヴィッツは、決勝レース開始から15時間が経過した午前7時ごろに、ニュルブルクリンク24時間のイベントラップレコードを破る8分8秒006を記録した。これは、ラファエル・マルチェロが金曜日に記録した予選ラップレコードを1.052秒上回るタイムだった。

2023ニュルブルクリンク24時間 20号車フェラーリ 296 GT3(WTM byリナルディ・レーシング)

■全損のダチアと復活のマンタ

***118号車ダチア・ロガンを走らせたオリス・ガレージ・レーシングはSNS上の声明で、54号車ディナミックGT SRLのポルシェ911 GT3 Rとのクラッシュで受けた損傷は、チームのニュルブルクリンク24時間レース参戦プロジェクトの終了を招いたと発表した。チームはその理由として、損傷したエンジンの調達が現在では不可能であることを挙げている。

 ダチアをドライブしていたマクシミリアン・ヴァイサーメルは、メディカルチェックのため地元の病院に運ばれたが、無事が確認された。ダイナミックの54号車ポルシェをドライブしていたラウリン・ハインリッヒには、クラッシュの過失があるとして3000ユーロ(約45万円)の罰金が言い渡されている。

***ニュルブルクリンク24時間の名物マシンとして人気を博す121号車オペル・マンタは、117周を完走し、総合74位/クラス2位でフィニッシュ。マンタをドライブしたフォルカー・ストリチェクは、ニュル24時間レース45回目の出場を果たし、自身の持つ最多出場記録を更新した。

2023ニュルブルクリンク24時間 118号車ダチア・ロガン
2023ニュルブルクリンク24時間 121号車オペル・マンタ

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