【第2回WUBS】白鷗大ソルジャーズ網野友雄監督 - 「願わくはしっかり勝ち上がって、より高いレベルの競争をしたい」

今年8月に2度目の開催を迎えるWUBS(Sun Chlorella presents World University Basketball Series=ワールド・ユニバーシティー・バスケットボール・シリーズ、以下WUBS)は、昨年の4大学から8大学に規模を拡大して行われる。日本からの出場枠も2チームに増えており、2年連続出場の東海大に加えて、第74回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)準優勝の白鷗大ソルジャーズも出場権を得ている。

網野友雄監督率いる白鷗大は、大学自体の創設が1986年という比較的新しい大学だが、直近10年間の躍進ぶりは目覚ましい。何しろこの4年間はインカレでベスト4を逃した年はなく、2021年には念願かなって日本一の座を獲得している。まぎれもなく日本の大学バスケットボール界を代表するにふさわしい強豪と言えるだろう。

WUBSは白鷗大にとって、世界基準を肌で感じてさらなる飛躍を遂げるきっかけにもなりうる大会だ。網野監督は初出場の意義についてこう語る。

「大学界は国際経験が少ない状況です。U22の活動や李相佰、ユニバなどはありますが、それ以外の国際ゲームがほとんどありません。そういった経験を代表以外の学生たちができるという意義はすごく大きいと思っています」

今夏の第2回WUBSにインカレ準優勝チームとして出場する白鷗大の網野友雄部長兼監督。スプリングトーナメントではチームを準優勝に導いた(写真/©月刊バスケットボール)

こうした認識もあり、網野監督は折に触れてチームに国際的な経験を積ませる機会を過去にも用意してきた。例えばコロナ禍が始まる前までは韓国遠征をしたり、フィリピン大が来日した際に練習試合を行ったという。しかし、国際交流に厳しい制限がかかった2019年以降、そうした活動もできなくなっていた。「今在籍している学生は、単独で国際ゲームに取り組んだことはありません。この大会は僕たちにとってもありがたい経験だと思います」。これはコーチとして、教育者としての本音だろう。

第2回WUBSでチームに期待することの一つは、「物おじせずハードに取り組むこと」だという。「どうしても国際経験が少ないので、見たことのないユニフォームを着た海外の選手を目の前でパッと見たときに、大きく見えてしまうというようなことが起きると思うんです。ハードに泥臭くぶつかっていってほしいですね」と網野監督は語る。その上で、チームとして自信を持っているディフェンスの強度がどのくらい通用するか。「願わくはしっかり勝ち上がって、準決勝でシドニー大とアテネオ大の勝った方とやって決勝まできちっと進み、より高いレベルの競争をしたいという思いです」。貴重な舞台に指揮官はどん欲な姿勢を見せる。

目標はすべての大会において優勝。これはWUBSでも変わらない。ただし結果に一喜一憂するのではなく、参加の意義をかみしめながらプレーすることに重点を置くことを網野監督は強調した。「自分たちの力がどのくらい通用するかを確認しながら、国際交流を含めた人間関係の構築が達成できたらいいと思っています」

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4年生でチームの中心となる脇 真大は今年の李相佰に日本代表として参加したが、白鷗大単独としての国際経験は今回のWUBSが初めて。今後のキャリア構築を考えると、貴重なステップになりそうだ(写真/©月刊バスケットボール)

\--{ペルバナス・インスティテュートとの初戦で勢いに乗りたい白鷗大}--

ペルバナス・インスティテュートとの初戦で勢いに乗りたい白鷗大
さて、今年の白鷗大はどんなチームなのか。今年度最初の公式戦となる第72回関東大学バスケットボール選手権大会(スプリングトーナメント)では、機動力もサイズも兼ね備えた破壊力満点のバスケットボールで、準優勝と上々の結果を手にしている。ゲームキャプテンを務めるガードの森下瞬真、ウイングの得点源となる脇 真大、身長203cmのシソコ ドラマネ、そして2年生ガードの佐藤涼成の4人は、この大会で戦った5試合すべてでスターター。スターティングフォワードのもう一人の枠は、ベスト8決めの明星大戦と準々決勝の関東学院大戦では3年生のポーグ健が、準決勝と決勝では4年生の嘉数啓希が務めていた。

ゲームキャプテンを務める森下瞬真。最上級生としてチームをけん引し、まずはスプリングトーナメントで準優勝という上々の結果を残した(写真/©月刊バスケットボール)

スターターは上級生が中心となっているものの、ベンチから出てくる下級生たちの活躍もまた頼もしい。1年生でも、フォワードの八重樫ショーン龍のスピードに乗った速攻や、脇とともに李相佰の日本代表に名を連ねた境アリームの豪快なブロックショットが会場を沸かせたのは一度や二度ではなかった。

☆スプリングトーナメントの登録プレーヤー
※記載は左から背番号、名前(学年、出身校)、ポジション、身長(cm)/体重(kg)

#2 脇 真大(4年、岡山理大附) F 192/88
#4 佐伯崚介(2年、土浦日大) SG 185/79
#7 境アリーム(1年、開志国際) PF 198/90
#8 陳岡流羽(3年、土浦日大) F 186/83
#16 八重樫ショーン龍(1年、仙台大附明成) SF 185/74
#20 根本 大(3年、つくば秀英) G 180/72
#22 内藤晴樹(1年、仙台大附明成) G 188/78
#24 森下瞬真(4年、延岡学園) PG 173/72
#25 モンガ バンザ ジョエル(2年、別府溝部学園) PF 202/106
#36 ポーグ健(3年、延岡学園) PF 188/88
#39 奥山誠海(2年、正智深谷) SG 185/75
#45 シソコ ドラマネ(4年、高山西) C 203/97
#50 森山陽向(3年、能代工) C 191/80
#51 良知宏大(3年、静岡学園) SG 180/67
#71 嘉数啓希(4年、豊見城) F 190/84
#88 佐藤涼成(2年、福岡第一) PG 173/75

身長203cmのシソコ ドラマネ。フィジカリティーも運動能力も高い海外のプレーヤーと渡り合う上では、彼をはじめとしたフロントラインに国内大会以上の奮起も期待したくなるところだ(写真/©月刊バスケットボール)

網野監督は、2017年に白鷗大に加わって以来ディフェンスに注力してチーム作りを進めてきている。そのスタイルを、自信を持てるまでに確立した上で、現在はシューターを多く起用して得点面のベースを高めて接戦でも勝ち切っていくことを課題にしているという。スプリングトーナメントでは、「やろうとしていること自体は取り組めている」と手応えを感じた様子だった。

第2回WUBSでの白鷗大は、まずインドネシアの大学リーグLIMAの王者ペルバナス・インスティテュートと対戦することになっている。この試合に勝つと、ディフェンディング・チャンピオンのアテネオ・デ・マニラ大(フィリピン)とシドニー大(オーストラリア)勝者が相手の準決勝、負ければ両チームの対戦の敗者と戦う5-8位決定戦だ。

スカウティングが十分にできない状況で、網野監督も対戦相手のことは「ざっくりとしかわかりません」というのが現状。しかし、初戦の相手となるペルバナス・インスティテュートから、決勝まで進んだ場合に対戦する可能性がある(*1)山﨑一渉所属のラドフォード大(アメリカ)まで、見どころの多い大会への期待は大きく膨らんでいる。「アメリカは言わずと知れた個の能力や競争意識の高さだと思うので、そのレベルで一渉がどのくらいできているのか。世界のトップレベルの国の大学バスケットがどのくらいなのかを感じるチャンスなので、単純に楽しみです」。そんな中で白鷗大がどこまでいけるかにも、もちろん注目して見届けたい。
*1=白鷗大とラドフォード大は、順位決定戦で対戦という可能性もある

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