かつては日本一…行田「南河原スリッパ」を次世代へ 伝統×革新で売り上げ増 中小企業庁長官表彰を報告

行田邦子市長(中央)に中小企業庁長官表彰の受賞を報告し、南河原スリッパもプレゼントした山本栄治会長(右から2人目)ら関係者=19日午前10時20分ごろ、埼玉県行田市役所

 埼玉県行田市の南河原商工会の関係者が19日、市役所を訪れ、昨年11月10日に開かれた第62回商工会全国大会で最上位の中小企業庁長官表彰を受賞したことを行田邦子市長に報告。同表彰は地域経済の持続かつ安定的な発展に貢献した団体に贈られるもので、伝統の南河原スリッパに斬新なデザインを取り入れた新しい発想と過去4年間で約7千足を販売した実績が評価された。

 旧南河原村では1954年ごろから農閑期の副業としてスリッパ製造を開始。村の全世帯の約9割が何らかの形で製造に携わり、80年には日本一の生産量を誇った。しかし、海外製の安価な製品が国内市場に流入したこともあり、ピーク時に約40軒あった製造業者は現在4軒に減少した。

 伝統技術を次世代に伝えていこうと、南河原商工会が中心となって南河原スリッパプロジェクトが2017年度から始動。西アフリカやブラジルの生地などを使ったスリッパを製造し、デザイン性や品質で人気商品になった。新型コロナウイルスの影響でスリッパ需要が増えたことと、ブランド効果で売り上げも増加。南河原スリッパの現在の売り上げは17年度の約4億円を上回る約4億5千万円になった。

 同商工会の山本栄治会長(67)は2月に南河原スリッパを商標登録し、10月には秩父銘仙の端切れを使った新商品を販売することも紹介。行田市長に南河原スリッパもプレゼントした山本会長は「これからも工夫しながら頑張っていきたい」と語った。自前でも南河原スリッパを購入したという行田市長は「履き心地が良く、長く履いても疲れない。南河原スリッパは行田の誇りで、今後も地場産業とのコラボを進めてもらえれば」と話した。

© 株式会社埼玉新聞社