「土石流災害の前にあったなら」と遺族 盛り土規制法施行 厳罰化で徹底監視・規制へ=静岡

2021年7月、熱海市で起きた土石流災害を受け不適切な盛り土を造成した業者などに対し、大きな罰則が科せられる「盛り土規制法」が5月26日、施行されました。家族を亡くした男性は「災害が起こる前にこの法律があれば」と今の気持ちを語りました。

災害からまもなく2年。土石流で妻を亡くした田中公一さんに自宅のあった熱海市伊豆山で話を伺いました。

<田中公一さん>

「役所自体も法制化されている方が強く指導できると思う。2年経つんだけどそれができたってことは、ありがたいと思っている。亡くなった人たちの死も無駄にはならないんじゃなかなという気がします」

2021年7月、熱海市伊豆山で起きた土石流災害では災害関連死を含め28人が犠牲となりました。崩落の起点に人工的につくられた不適切な盛り土が被害を甚大化させました。

これを受け国は不適切な盛り土を全国一律に規制するため、「盛り土規制法」を閣議決定し、26日施行しました。

<県盛土対策課 望月満課長>

「土地所有者に対して維持管理をしなければいけないという責務が発生します。法律上明確に管理をしなければならない。場合によっては行政が指導・是正命令を出すこともあり得ます」

施行された法律では、各自治体が人家に危害を及ぼす可能性のあるエリアを「規制区域」に指定し、新しく盛り土をつくる場合は知事や政令市長の許可が必要となります。

また、2022年7月に施行された県独自の条例では罰則は最大懲役2年または罰金100万円以下でしたが、「盛り土規制法」では最大懲役3年または罰金1000万円以下、法人については最大3億円以下の罰金と厳罰化されました。

<県盛土対策課 望月満課長>

「熱海の二の舞にならないように、徹底的に盛り土行為に対して監視・規制を強化していきたいと思います」

県は盛り土規制法と県独自の条例の2つを使って、熱海土石流のような被害を二度と起こさないと話しました。

また、熱海市の斉藤栄市長は「盛り土規制法は再発防止策として価値がある」と評価した一方で…。

<熱海市 斉藤栄市長>

「この法律だけで悪徳事業者をきちんと排除できるのか。この法律以外で既存の法律も一緒になって取り組んでいくことで当初の目的が果たせると思っている」

国に対して遺族も訴えてきた法律の整備がようやく一つの形になりました。

<土石流災害で妻を亡くした田中公一さん>

「全国でたくさん(伊豆山と)同じような場所があったと思う。災害が起こる前に(法整備が)できたらありがたいなって、発災当時から思ってましたけどね」

土石流災害からまもなく2年…新しい法律は施行されましたが、大切な人を失った遺族の悲しみが癒えるわけではありません。

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