佐世保の不適切保育 大阪教育大・小崎教授に聞く 被害者への寄り添い感じない 園への積極的介入が必要

大阪教育大の小崎恭弘教授(提供)

 12年間の保育士経験も持つ大阪教育大教育学部の小崎恭弘教授(54)に、不適切保育が起こる原因や、行政の対応の在り方を聞いた。発生原因の一つとして、職場環境の問題を指摘。長崎県佐世保市の一連の対応を巡っては、子どもの証言を真摯(しんし)に聞くべきだとして、再発防止などに向けて「園に積極的に介入する必要がある」と強調する。

 -不適切保育が起こる原因は
 個人の資質の問題が前提。資質をつくった環境の要因もある。市内で発生した二つの園では、複数の保育士が関わっている。不適切なやり方を許す文化がつくられており、園長らの管理に間違いなく問題がある。
 忙しさや安い給料など、保育士を取り巻く実情もあるが、不適切保育をしない人が圧倒的に多い。環境を言い訳にしてはいけない。保育全体の価値をおとしめていると自覚すべきだ。

 -園内は保育士らと園児のみで密室に近い。事実関係の立証に難しさがある。
 特殊な環境だからこそ、保育士や医師など弱き者を支援する職業には、高い倫理観が求められる。そこに悪意があれば防ぎようがない。対策の一つに、ビデオカメラの設置がある。園児も、健全な保育士を守ることにもつながる。

 -市の対応の遅さなどに不満を募らせる保護者らもいる
 行政には▽客観的事実の確認、把握▽迅速な対応▽被害者の思いに寄り添う-ことが重要だ。対応が後手に回っている。被害者への寄り添いを感じない。市も、子どもの証言をもっと真摯に受け止めなければいけない。
 昨年12月には、静岡県裾野市の私立保育園で園児を逆さづりにしたなどとして、保育士が暴行容疑で逮捕された。市長は当時の園長を犯人隠避の疑いで刑事告発した。「不適切保育を許さない気概」を感じる。佐世保市は、客観的事実だけではなく、被害者らの最善の結果を意識した取り組みが必要だ。


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