「保育園落ちた」から「#学童落ちた」へ…喫緊の課題、学童の待機児童問題を解決するには?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜7:00~)。「激論サミット」のコーナーでは、“学童の待機児童問題”について、子育てアドバイザーの高祖常子さんを交えて議論しました。

◆"保育園落ちた”が"学童落ちた”に

今から7年前、「保育園落ちた 日本死ね!!」というSNSでの投稿を機に保育園での待機児童問題の深刻さが浮き彫りに。すると政府も施設・職員を増やすなどの対策を講じ、最近では全国的に解消されつつあります。

そんななか、この春には新たに「#学童落ちた」とのワードがSNS上で話題となり、一躍トレンド入り。その他にも「学童落ちた 腹立つ 1年生から1人でお留守番なんかできない」、「夫婦ともフルタイム勤務だけど学童落ちた 日本の子育て支援大丈夫そう?」など学童に関する投稿が散見。小学生の子どもを持つ働く保護者が子どもを学童保育に預けたくても受け入れてもらえないケースが多発しています。

働かなければならないのに、子どもを預けられず、仕事に影響が及んでいる育児環境の現実。一体どうすればいいのか?

そもそも学童保育とは、日中に親が家にいない小学生に、授業終了後に遊びや生活の場を提供するもの。公立は基本的に預かり時間17~18時までが約4割。19時までが約5割あり、費用はおおよそ1万円以内。一方、民間の学童もあり、場所によっては19時以降も対応している所や24時間対応している場所もありますが、費用は高めで約3万円~8万円となっています。

そして、学童の待機児童数の推移を見てみると、2022年5月1日時点のデータでは2021年は減少しているものの、これはコロナ禍の影響だとか。コロナの影響、テレワークで親が家にいるといった理由で学童に通うのをやめた家庭も多く、待機児童が減ったように見えますが、これはあくまで一時的なもの。今後はまた増えていくと予想されています。

少子化が叫ばれるなか、なぜ学童の待機児童が増えているのか。その理由について、保育士や幼稚園教諭の資格を持ち、育児情報誌の編集長を14年間担当し、NPO法人 児童虐待防止全国ネットワーク理事を務める高祖さんは「共働きが増えたこと」を挙げます。さらに、保育園の待機児童問題は対策を講じたため解消傾向にあるものの、学童の対策が整備されていないことなどを指摘します。

◆「施設・職員の整備」or「親の労働環境改善」

では、学童の待機児童問題解消に向けてどうすべきなのか。まずは「施設・職員を増やす」と「親の労働環境の改善」のどちらを優先すべきか、コメンテーターに質問したところ、みんなが迷うなか、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは前者に即決。

ただしそれは条件付きで、現状では学童に関して法律も規制も監督省庁もないことから、"ルールの厳格化と指導員などの待遇改善”を求めます。そして、後者を選ばなかった理由として「改善には限りがある。できる人が限られてしまう。この享受を受けられるのは一部のみ」と案じます。

エッセイストの小島慶子さんは、熟考の挙句「両方」。施設や職員などの環境整備は当然ながら必要で、それをやりながら「同時に親の労働環境の改善を目指さないといけない。そうでないと付け焼き刃で終わってしまう」と危惧。

アルピニストの野口健さんは、「親の労働環境の改善は難しい。どちらかと言えば施設・職員を増やすこと」と最終的には前者を選びつつ「ただ、これは税金を使う。そうなると子どもがいない家庭や高齢者を含め、みんなで負担しない限り実現できない」と課題について触れます。

なお、高祖さん曰く、公立と民間による学童のほか、文部科学省が管轄する「放課後子ども教室」というものもあることを紹介。これは学校の空き教室などを子どもに居場所として提供するもので、自治体によっては17~18時ぐらいまで稼働しているそうですが、あくまで居場所であり、「学童とは扱いが異なる」と話します。

キャスターの堀潤は、「施設・職員を増やす」と「親の労働環境の改善」の2択だけでなく、民間の学童を増やし、上手く活用していくこともひとつの手段ではないかと思案します。

高祖さんはさまざまな選択肢を作ることが大事とし、さらには小島さんが指摘していたように親の働き方の変化も切望。ただし課題もあり、保育園が増加するにつれ質の低下が起こり、最近でも問題視されたことに触れつつ、「学童も質の問題が重要。その辺りの整備は必要」と指摘します。

◆学童の待機児童問題、その解決策は?

学童の待機児童問題が顕在化するなか、解消に向け各地でさまざまな取り組みが行われています。例えば、福島県・郡山市では「makana」という放課後児童クラブがあり、そこでは22時まで対応しており、夕食も提供。提携のスーパーや飲食店から提供してもらうため比較的に安く使うことができるとか。また、東京都・足立区では区内のマンションの空き部屋を利用し、需要に応じて施設数を柔軟に対応しています。

総じて、コメンテーターたちが今回の問題を解決するためのアイデアを発表。野口さんは「祖父・祖母との生活」を提案します。というのも、野口さんが子どもの頃は祖父母と暮らす家庭が多く、子どもの面倒は彼らが見る家庭も数多くありました。また、現在は核家族化が進み、高齢者の孤独死の問題も叫ばれているとし、「これが実現できれば、両方解決できる」と野口さん。

小島さんは「人間らしく働ける日本に」と標榜し、子どもの有無に関わらず、家族の都合や健康上の事情で誰もが仕事を休めて、その後も気軽に仕事に復帰できる社会を望みます。

大空さんは、"いばしょの多様化”を提案した上で「地域も大事だし、子どもが外で遊ぶことも大事だと思うが、親御さんも(子どもを預けるのは)学童だけだと思わないでもらいたい」と主張。例えば、オンラインゲームでも他人と繋がって遊ぶことができるとし、「(子どもの居場所が学童だけと)決めつけるのではなく、もっと多様化していってもらいたい」と訴えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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