北朝鮮が「人工衛星の打ち上げ」を通報 5月31日から6月11日の期間に発射か

北朝鮮当局から海上保安庁に対して、2023年5月31日から6月11日までの間に「人工衛星の打ち上げ」を実施するという通報があったことをNHKなどが報じています。【2023年5月29日13時】

海上保安庁の「海の安全情報」ウェブサイトでは、黄海・東シナ海・ルソン島(フィリピン)東の3か所の海域に関する「衛星ロケット打ち上げ」の情報が、5月29日5時17分に緊急情報として掲載されています。期間は5月31日0時から6月11日0時です。

また、同庁が提供している日本航行警報(太平洋、インド洋及び周辺諸海域を航行する日本船舶に対して緊急に必要な情報)を参照すると、黄海と東シナ海の境界付近に計2か所と、フィリピン東方の太平洋に1か所、合計3か所の海域を確認することができます。

【▲ 黄海に設定された計2か所の海域を示した図。海上保安庁の水路通報・航行警報位置図から(Credit: 海上保安庁)】

【▲ フィリピン沖の太平洋に設定された海域を示した図。海上保安庁の水路通報・航行警報位置図から(Credit: 海上保安庁)】

北朝鮮はこれまでにも「人工衛星の打ち上げ」と称した飛翔体の発射を4回行っており、直近では7年前の2016年2月7日に実施されています。北朝鮮は軍事偵察衛星の打ち上げを目指しているとも報じられていますが、仮に今回通報された発射がその打ち上げを企図したものだとすれば、地球観測衛星や偵察衛星で利用される極軌道への投入が行われる可能性があります。

関連:北朝鮮ミサイルは沖縄上空を通過、5つに分離も被害報告なし(2016年2月7日)

東西冷戦期の米ソ宇宙開発競争で大陸間弾道ミサイルが人工衛星や有人宇宙船の打ち上げに転用されたように、大陸間弾道ミサイルと衛星打ち上げ用のロケットは表裏一体なシステムでもあります。しかし、地下核実験やミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮に対して、国連安全保障理事会は弾道ミサイル技術を使用した発射をはじめ、弾道ミサイルおよび核関連活動の停止・計画の放棄を安保理決議で義務付けています。

NHKなどによると、衛星と称しても弾道ミサイル技術を使用した発射は安保理決議違反であるとして、岸田総理は米国や韓国などと連携して北朝鮮に発射の自制を求めるとともに、不測の事態に備えて警戒監視に全力をあげる方針です。また、防衛省は5月29日付で、我が国領域に落下することが確認された弾道ミサイル等に対する破壊措置命令が浜田防衛大臣から発出されたことを発表しています。

Source

  • Image Credit: 海上保安庁
  • 海上保安庁 \- 海の安全情報
  • 海上保安庁 \- 日本航行警報
  • 首相官邸 \- 北朝鮮による「衛星」と称する弾道ミサイルを発射する旨の通報に関する総理指示(3:15)
  • 防衛省 \- 弾道ミサイル等に対する破壊措置の実施に関する自衛隊行動命令について

文/sorae編集部

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