雨中の勝負、ファン熱中 近谷「絶対勝ちたかった」 全プロ自転車

4キロチームパーシュートで3位に入った富山支部チーム。先頭は個人で優勝した近谷選手=富山競輪場

 競輪選手によるトラック競技の真剣勝負に、スタジアムが沸いた。29日に富山市の富山競輪場で行われた全日本プロ選手権自転車競技大会。五輪種目のスプリントや追い抜きなど普段の競輪とは異なるレースで、続々とハイレベルな争いが展開された。あいにくの雨に見舞われたが、富山支部勢は4キロ個人パーシュート優勝、同チームパーシュート3位入賞と活躍を見せ、地元ファンを熱くさせた。

  ●地元の維持、第一人者の誇り

 地元の意地と第一人者としての誇りが4キロ個人パーシュートに懸かっていた。「気合がすごく入っていたし、この種目は15年やってきて絶対勝ちたかった」。近谷涼選手(富山)はゴール直後、観客から優勝を教えられ、雄たけびを上げた。すぐに右手でつくったVサインを自分の目とスタンドに交互に向け「見えていたよ」の合図。ファンの熱い応援に感謝した。

  ●5秒差圧勝V

 アマチュア時代からこの種目のスペシャリストとして知られ、優勝候補に挙げられていた近谷選手。「意地しかなく、チーム戦で負けた悔しさもぶつけた」とスタートから飛ばし、全体2位の選手に約5秒差をつける圧勝だった。

 近谷選手はアマチュア時代、同種目の日本代表として活躍。2017年にはUCIトラックワールドカップ第4戦チームパーシュート2位の成績を残した。夢の競輪選手に転向し、昨年デビューを果たした。競輪で培ったパワーとスピードがレースに生き「思っていた以上のタイムが出た」と自身の成長を実感した。

 37年ぶりの地元開催。「勝てる時に勝ちたかった」。表彰式でチャンピオンジャージーを着ると、安堵の表情を見せ、笑みがこぼれた。

 競輪の階級は現在、6階級中最下位のA級3班で、7月には一つ昇班が決まっている。「(最高峰の)S級S班を目標に強い気持ちで進む」。競輪選手2年目の31歳は、まだまだ進化の途中だ。

  ●一時はVペース、悔やむ重倉 チームパーシュート3位

 チームパーシュートの富山支部勢は、最終盤に3番手の重倉高史選手が遅れて車列を乱した。優勝ペースだっただけに、重倉選手は「近谷が強い。気合と根性を出したが、体力がついてこなかった」と悔やんだ。

 それでも、南儀拓海選手がペースメーカーとしての役割をしっかり果たし、支部としては久々の入賞。「情けない」と嘆き続ける重倉選手の横で、後輩の吉川希望選手は「入賞はうれしい。このメンバーで来年リベンジしたい」と笑った。

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