滋賀・近江八幡の地下道で女性溺死 検証委が最終報告案 市の対応不備は盛り込まず

事故検証委員会後、報道陣の質問に答える多々納裕一委員長(近江八幡市出町・市文化会館)

 昨年7月、滋賀県近江八幡市安土町の地下歩道が豪雨で冠水し、近くの女性=当時(72)=が溺死した事故で、市が設置した事故検証委員会が29日、最終報告書案を示した。豪雨時に溢水(いっすい)や逆流が生じている周辺水路の改修といった対策を提示する一方、女性の遺族が求めた行政の対応不備なども含めた検証は行われず最終報告書案に盛り込まれなかった。

 最終報告書案では、流入を想定していなかった地下歩道南側の水路で溢水や逆流が発生し地下歩道の冠水につながったとした。その上で対策として、問題の水路の改修▽県市の緊密な情報共有と迅速な通行規制を行える体制の構築▽通行止めの実施基準を地域住民と協議―などを提言した。滋賀県が事故後に実施した周辺の流域調査の結果を踏まえた。

 検証委に対しては、女性の遺族が中間報告をとりまとめた後の今年1月、行政の対応を含めた検証を求めた質問状を市と検証委に提出していた。だが、検証委は「水防対応の優先順位や必要な人員については十分議論している」として改めて議論せず最終報告書案に盛り込まなかった。

 事故発生時の状況についても、事故現場以外の対応を要する場所に人的資源を割り振ることに一定の合理性があったとし、「事故を防ぐことはできなかった」とする中間報告書の結論は変更しなかった。

 委員長を務める京都大防災研究所の多々納裕一教授は「命に関わるような事故が起こるという認識が十分でなかったことは問題だ」とした上で、最終報告書について「対策は安全性と利便性をはかりにかけなければならないところが出てくる。地域の方と相談しながら折り合いをつけるところを探ることになる」と述べた。

 次回会合は6月に開き最終報告書をとりまとめる予定。

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