黒枝豆「ひかり姫」栽培希望者が殺到 「丹波黒」基に開発、遺伝子94%一致 ほぼ同じ味で高い収益性 兵庫・加西で講習会

栽培希望者を対象に開かれた講習会では、トラクターでの種まきが実演された=加西市別府町

 新型コロナウイルス禍で減産した兵庫県産の酒米「山田錦」の代替作物となった黒大豆枝豆「ひかり姫」が、品質の高さなどから消費者、生産者の双方からひっぱりだことなっている。昨年の出荷量は前年の2倍近い約65トンとなり、県立農林水産技術総合センター(加西市)が開く講習会には栽培希望者が殺到。急きょ今季2回目の会場を設けるほどの盛況ぶりだ。(三宅晃貴)

 ひかり姫は、同センターが豆、枝豆とも人気の「丹波黒」を基に開発した。丹波黒と遺伝子レベルで94%が一致し、粒の大きさや濃厚な味はほぼ同じ。一方で、病害に強く、莢(さや)にできる茶色の斑点が極めて少ないのが特長だ。

 2016年から県内で試作が始まった。コロナ禍で日本酒の消費が低迷した20年、JA兵庫みらい(加西市)などが、山田錦の減産を強いられた農家に代替作物として提案。収益性が山田錦の約10倍という高さもあり、21年は県内19市町で約5.5ヘクタール、22年には21市町の約8.9ヘクタールと栽培面積は広がってきた。

 出荷量は県全体で21年の約36トンから、22年には約65トンに拡大。同JAでも21年はスーパー1社への4.4トンだったが、22年には4社、計14トンと3倍に伸びた。同センターの担当者は「莢の美しさや丹波黒と遜色ないおいしさが認知されてきた。イオンやコープこうべなど大手の引き合いも増えている」とし、今年は生産エリア、生産量、出荷量ともさらに増えると見込む。

 22日、同センターであった今季2回目の講習会には栽培希望者ら約50人が集まった。生産農家や研究員らが栽培の要点や今後の機械化の予定などを解説。農場でのトラクターを使った種まきの見学会もあった。生産を始めて3年目になる参加者(34)は「1株の莢が多く収量を見込める。行政の協力もあって取り組んでよかった」と話した。

 生産が増えるひかり姫だが、県は、伝統の丹波黒との交雑を防ぐため、互いの生産地間の距離を保つなどのルールを設ける。種子の販売も県が認めた業者に限るなど管理している。

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