事件記録の文書デジタル化、事実上見送りへ 最高裁、調査報告書で「慎重に検討」

全国の裁判所で発覚した事件記録の廃棄問題を受け、最高裁が廃棄の経緯などを調べた調査報告書の表紙(撮影・風斗雅博)

 1997年の神戸連続児童殺傷事件をはじめ、各地で重大少年事件の記録が廃棄されていた問題で、最高裁は25日、廃棄に至った経緯や再発防止策を示した調査報告書を公表した。現在は紙で保存している事件記録のデジタル化については、「慎重に検討する必要がある」と明言を避けた。

 昨年秋、連続児童殺傷事件の全ての記録廃棄が判明した後、記録のデジタル化による永久保存を促す声が上がった。専門家による最高裁への請願や意見陳述でも同様の意見が出た。

 しかし、25日に公表された報告書では「全て電子化するとなると、膨大な作業を要するほか、保存データ量も膨大になるなど、多大な人的・物的コストが生じる」と説明。「これを国民の負担で行うことが相当といえるのかは慎重に検討する必要がある」とした。

 さらに、仮に電子化して保存した場合、紙媒体の記録との関係性をどう考えるかという問題もあると指摘。現在の紙で保存する記録は「特別保存(永久保存)に付すべき記録を適切に保存し、その上で国立公文書館などへの移管を進めていくことによって確実に後世に引き継いでいく態勢とすることが相当」と記し、現時点でのデジタル化は事実上見送る姿勢を示した。(霍見真一郎)

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