歴史的不漁から全国1位へ 兵庫のノリ生産、復活への取り組みは? 窒素濃度調整、海底の泥かき回すなど手応え

検品、箱詰めされていくできたてののり。この後入札にかけられる=明石市岬町

 近年、不漁に悩まされてきた播磨灘特産のノリ。今シーズンは佐賀県などが不振に苦しむ一方、生産量を維持した兵庫県が都道府県別生産量で1位となる見込みだ。明石市漁業組合連合会の大西賀雄会長(63)は「さまざまな取り組みの成果が少しずつ出てきたのかもしれない」と手応えを語る。(有冨晴貴)

 ノリは全国で毎年秋から翌年初夏まで養殖される。生産量や品質には「栄養塩」と呼ばれるリンや窒素の状態が大きく関わっている。今シーズンは天候に恵まれ、色落ちが始まる2、3月に雨が多く、海に栄養が補給された。色落ちせず、単価の高い製品が多く生産できたという。

 高度経済成長期の1960~70年代には、工場や下水の排水によって海や川の水質が悪化。播磨灘も影響を受けた。廃水処理が徹底されるようになったが、栄養を過剰に取り除いた処理水が排水され、海の貧栄養化につながった。近年は、栄養塩が不足する状態が続き、不漁の原因とされる。2021年度には大量発生したプランクトンが栄養塩を食べ尽くしてしまい、歴史的不漁となった。

 兵庫県は2019年から、下水処理場から排出する水について、窒素の濃度に下限値を設ける「管理運転」を導入している。

 漁業関係者も対策を打っている。ため池の底にたまった泥には栄養塩が多い。泥をかき出して河川に流す「かい掘り」で栄養を供給する。1月に大久保町松陰ため池協議会の主催で行われ、市漁連も協力した。

 海底にたまった泥をかき回す「海底耕運」もある。巨大な「くわ」のような鉄器を海底に垂らし、漁船でけん引する。さらに海に鶏ふんなどをまく施肥や、山の保水力を上げるための植林にも取り組む。

 施肥などには市の補助も受けているが、各漁協や市漁連の持ち出しも多いという。大西会長は「行政に協力を依頼しつつ、できる限りの取り組みを続けたい」と話している。

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