院長を務め半世紀、玖珠耳鼻咽喉科の野北さん引退 温厚な人柄で地域住民に慕われ【大分県】

半世紀にわたり地域の医療を守ってきた野北慶之助さん(右)とバトンを引き継ぐ上野哲子さん=玖珠町帆足

 【玖珠・九重】玖珠、九重両町でつくる玖珠九重行政事務組合が運営する玖珠耳鼻咽喉科医院(玖珠町帆足)で、半世紀にわたり院長を務めてきた野北慶之助さん(89)が5月末で引退する。同医院は郡内唯一の耳鼻咽喉科。6月からは日田市出身の上野哲子さん(46)が引き継ぎ、地域医療は途切れることなく続く。

 野北さんは医院ができた1973年、院長に就任。温厚な人柄で地域住民に慕われ、4世代で通う患者もいるという。中耳炎の痛みで飛び込んでくる急患や夜間の診療にも丁寧に対応してきた。診察の傍ら、小中学校の検診で郡内全域を回り、「通った道を塗りつぶしていたら地図が真っ赤になった。細い道路までくまなく走り回った」と振り返る。

 体力の衰えを感じ、引退を決意。「こんなに長くやるとは思っていなかった。患者さんに恵まれ、幸せな50年だった」と感謝する。親子ほど年の離れた後任の上野さんについて「とても優秀な医師。何も心配せず任せられる人が継いでくれてうれしい」。古里の福岡県添田町に戻り、ゆっくり過ごすつもりだ。

 後任は同組合が玖珠郡医師会と協力して探した。上野さんは「タイミング良く声をかけてもらい、縁を感じる。これまでの患者さんを不安にさせないよう、野北さんが積み重ねてきたものをしっかり守って頑張っていく」と力を込める。

 郡医師会の友成正路会長は「長い間、地域の医療を支えていただいた」と野北さんをねぎらう。同組合は「2人の医師に心から感謝する。住民の皆さんにはこれまで同様、安心して受診してほしい」と話している。

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