琵琶湖の味覚に異変?群れの数、平年の2割以下 「激減考えにくい」のになぜ

船上で捕れたアユの選別作業を行う今井さん家族(大津市・堅田漁港)

 琵琶湖を代表する味覚、アユの生息数を巡って、やや心配な事態が起きている。滋賀県水産試験場(彦根市)が毎月実施している調査で、今年4月まで3カ月連続して群れの数が平年の2割台以下しか確認できていないというのだ。ただ、同試験場の担当者は「激減しているとは考えにくい」と説明する。湖国のアユに一体何があったのか-。

 東の空が朱に染まる午前5時ごろ、堅田漁港(大津市)に船が1隻、また1隻と戻ってきた。「3~4月は不漁が続いて心配したが、5月に入って少し良くなってきた」。アユのエリ漁から戻った堅田漁業協同組合(同市)の今井政治副組合長(74)は、ほっとした表情を浮かべた。

 アユは琵琶湖の漁獲量の約4~5割を占める代表的な湖魚だ。湖にとどまる個体はあまり大きくならず、コアユと呼ばれて天ぷらやつくだ煮などで食卓に上る。主に12~3月に捕れる稚魚のヒウオも冬の代表的な味覚だが、近年はえさ不足などで資源量が減少傾向にあるという。

 資源量を把握するため、県水産試験場は「産卵調査」や「魚探調査」を実施している。このうち魚探調査では、毎年1~8月の各月、水の深さを示す等深線で30メートルのラインを調査コースにし、魚群探知機を使って群れの数を調べている。

 異変が起きたのは、今年2月。1月時点では平年比79%だった群れの数が、2月は27%、3月は3%まで落ち込み、4月も10%にとどまった。「激減」とも読める数字だが、同試験場生物資源係長の太田滋規さん(55)は「単純に減ったとは考えにくい」とみる。

 太田さんが根拠の一つとするのが、産卵調査の結果だ。8月下旬以降に県内11河川を担当者が巡り、産卵状況を確認する。現在魚群調査の対象になっているアユが生まれた昨年の結果は平年の75%で、直近5年間では2番目に多かった。

 では、なぜ確認できないのか-。理由の一つと考えられるのが産卵の時期だという。県水産試験場は別の調査でアユの生まれた時期を確認しているが、昨年はふ化のピークが9月末以降にみられたという。

 水温の高い9月中旬ごろまでに生まれたアユはその年の12月ごろまでに一定成長し、魚群探知機が反応するような群れを形成するが、水が冷たくなる10月に生まれた場合、同様に成長するのは4月以降にずれると考えられるのだ。また、成長の度合いで生息域が変わるため、調査コースから外れたエリアに生息している可能性もあるという。

 太田さんは「今年はえさになるプランクトンも十分みられるし、水温が極端に低くなることもなかった。5月以降は確認できる群れも増えるだろう」と期待を込める。

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