【埼玉県川口市 クルドの現場を行く①】不良・犯罪行為は本当か?|西牟田靖 「クルド人がかわいそうってのもいいけど、この地域に住んでいる子供たちの、そういう現状を見てから言ってくださいよ」と川口市議会議員である奥富精一氏。「そういう現状」とはどういう現状なのか、現場を取材した――。

「不良クルド人の所業に子供たちが怯えている」

ゴールデンウィークに入る直前の4月26日、とあるツイートが注目を浴びた。

芝前川上青木に住んでいる、子供たちの声も聴いて欲しい。
不良クルド人の所業に子供たちが怯えている。
クルド擁護ばかりではなく、なぜ受け入れられないのか、川口市の現場を見るべきです。

これは、東京新聞の名物記者、望月衣塑子氏の入管法改正反対・廃案のキャンペーン・ツイートへのリプライである。

《クルドの子供たちが、夕方、国会前で「法案を通さないで!」と必死に訴えている姿を法務委員会に行く前に見かけた。子どもたちの声を聞くだけで、胸が張り裂けそうだ(略)#入管法改定案は廃案に》と記した望月氏のツイートに対し、地元川口市議会議員である奥富精一氏が反論してみせたのだ。

《上記ツイートを削除した望月衣塑子氏》

川口市といえば外国人住居者日本一の多文化共生都市。外国人居住者の数は4万124人、総人口の6.6%をしめている(2023年4月1日現在)。

川口市や隣接する蕨市にクルド人が多く住むことからワラビスタンと呼ばれ、クルド人のひたむきさや彼らの文化の多様さなどを強調する記事がウェブ上に散見される。こうした記事を読めば、クルド人と共存をうまく図っている街というイメージを抱いてしまう。

しかし奥富議員のツイートからは、実情はそんな簡単ではないということが読み取れる。それどころか、「クルドの人たちとはもはや暮らせない」という悲痛なトーンすら感じられる。どういうことなのだろうか。

《数十人の中東系の男性たちが集まり、暴動のような小競り合いをしている。川口市での一幕だ》

実際、ウェブ上には、クルド人らしき中東系の男同士のケンカに群集が数十人集まってきた映像や、20代のクルド人男性グループが空き巣を繰り返しているという記事がいくつも出てきた。現場ではいったい何が起こっているのか。奥富精一議員に連絡をとったところ、取材を快諾してくれた。

メディアが報道しないクルド人の迷惑行為

5月15日、奥富精一議員に指定された蕨駅東口に降り立った。川口市議会議員である彼の市政レポートのビラには「外国人問題に向き合う。ルールを守ってこその共生社会」と書いてある。奥富氏は、川口市で唯一、クルド人の迷惑行為・犯罪行為に警鐘を鳴らしている議員なのだ。

《奥富精一川口市議会議員》(撮影:筆者)

奥富氏はツイートした理由を語る。

「地元の問題に目をつぶるわけにはいかなかった。だから『クルド人がかわいそうってのもいいけど、この地域に住んでいる子供たちの、そういう現状を見てから言ってくださいよ』と望月記者にリプしたんです。クルド人なのかほかのトルコ人なのか。地元住民には区別がつかないですが、不良外国人が運転する違法改造車が芝・前川・上青木の一帯の路地を猛スピードで駆け抜けているのは確かです。登下校の際、子供たちがいつ轢かれてもおかしくない状態。しかも彼らの多くは無免許、無保険、他人名義のものが珍しくありません」

クルド人を「弾圧から逃げてきたかわいそうな人たち」として扱い、彼らの迷惑行為・犯罪行為をメディアは報道しない。しかし、地元では子供たちが彼らによって、危険な目に遭うかもしれないという現状があるのだ。

無論、彼はクルド人すべてを攻撃しているわけではない。

「不良行為があると在日クルド人すべての評判が悪くなる。ルールを守っている善良クルド人が迷惑する。それを心配しているだけです」

深夜の集会、放尿、つば吐き、ナンパ……

奥富氏の運転する車は、蕨駅東口から近くのパチンコ屋前の路地へと進む。

「今もいますね。中東系の外国人ずっと張っていて、通行する女性に声をかけてナンパをするんです」

日本人女性と結婚できれば、配偶者としての在留特別許可が下りる可能性が高い。その機会を狙って声を掛け続けているのだという。

車道である東口駅前通りに出る。するとまもなくクルド人が経営しているトルコ料理屋が見えた。その前には、日中堂々、白い外車が停まっている。

「このポルシェも彼らのものですよ。路駐はしょっちゅうです」

この車の所有者はいったいどうやってこの車を手に入れたのだろうか。意外と羽振りが良かったりするのだろうか。そもそも免許は持っているのだろうか。

その後、車は2~3キロ先の芝・前川・上青木へと進んだ。この付近は奥富氏がツイートに記した地名。クルド人がもっとも住んでいるのがこの地域だ。

奥富氏の車は、大きな駐車場を持つドラッグストアの前に停まった。数十人の中東系の男性たちが集まり、暴動のように小競り合いをしている――そんな、とても日本とは思えない衝撃的な映像がジャーナリストである石井孝明さんのツイッターにて公開されたことは先に触れた。

ここがまさにその場所だ。

「深夜の集会もうるさいですし、放尿、つば吐き、夜騒ぎ、駅前のナンパ……。ドラッグストアでの数十人の騒動、あの映像ほどのものは見たことがないけど、なにかあると10人ぐらいならすぐ集まってきますよ」

ドラッグストアの壁には英語が併記された「不法投棄は犯罪です!」という文面の警告ポスターが何枚も貼られており、不法投棄がしばしばあることが見て取れた。

《ドラッグストア前への不法投棄が珍しくないようだ》(撮影:筆者)

車を降りて、店内に入り、パート店員の中年女性に話しを伺ってみた。「中東系のお客さんはよく来られますよ。万引きですか? なくはないですね」とさらりと言う。

外に出て、住民に話しを聞いた。店の向かいの集合住宅に住む還暦ぐらいの男性は言う。

「この辺りに不良外国人がいっぱい来て夜騒がしくしたりします。そういうのはけっこう頻繁にある。うるさくてうるさくて。あとここから200メートル先の公園で殴り合いやって人が倒れたりしてたこともあったね」

さらに男性は続けた。

「この建物(3階建て)に住んでいる日本人は3人だけ。あとは全部、中東の人たち。クルドかトルコか? それは知らない。とにかくね、ここには若い子だけじゃなくて、男女年齢関係なく大人から子供までいろいろ住んでいる。言葉で言い表せないぐらい困ってますよ。俺は今も住んでいるけど他の人は出て行ってしまった。日常的な事だからたまらない。大量のチラシを下に落っことしたり、私のところに入れていたり。夜中騒ぐし道路におもちゃを出しっぱなしだし。とにかく常識がなくてめちゃくちゃ」

彼にお礼を言うと、「ぜひ書いてください」と念を押された。

(撮影:筆者)

海外のスラムを歩いたときの緊張感

その後、車は住宅街を進んだ。一見するとどこにでもある下町の住宅街という趣だった。その中をクルド人らしき、中東系のふくよかな女性たちがベビーカーを押したり、子供乗せ自転車に乗って歩いていたりしている。とにかく女性ばかりが目立つ。

公園にあるというゴミ集積所に行くも、問題になっているという不法投棄は見当たらない。

「片付いているのは、誰が何を汚しても町会の人がマメに片付けるからです」

《日々、ゴミ捨て場の片付けを行っている町会の人たちの努力には頭が下がる》(撮影:筆者)

そのうち車は、クルド人が経営しているマーケットにさしかかった。向かいには水タバコのバーが見える。マーケットの入口には屈強そうなクルド人らしき中東系の男性が数人いて、奥富氏の車にするどい視線を向けてくる。治安がメタメタの海外のスラムを歩いたときの緊張感を一瞬感じた。今にも襲いかかってきそうだ。

彼らの彫りの深い顔つきに、過度に怖さを感じてしまっているだけなのだろうか――。結局、車は何事もなく車道へ出た。すると奥富氏は僕に注意を促した。

「爆音が聞こえるでしょう。あの改造車がそうです」

異様な重低音を響かせる改造車がすぐ前を走っている。エンジンがうなりをあげて、急加速して右折していった。速くて追いつけない。

「やることなすこと乱暴すぎて、スピード出しますからね。何人も轢かれそうになってます。実際、轢かれてる人もいるし。轢かれたらもうほとんどひき逃げですから」

無免許・無保険の悪質ドライバーが頻繁に現れるエリアを通って通学させる子供たちの親は、気が気でないだろう。

(つづく)

《目撃した暴走車は撮影できず。この写真は筆者が目撃した車とは別》(写真:読者提供)

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西牟田靖

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