マダニ感染症治療に期待 富山化学開発「アビガン」 希少疾病用薬品指定へ

SFTSに効果があるとされるアビガン(富士フィルム富山化学提供)

  ●試験開発を促進、厚労省審議部会で承認

 富士フイルム富山化学(東京)の開発した抗ウイルス薬「アビガン」が、29日の厚生労働省薬事・食品衛生審議会の部会で、薬事承認申請の優先審査など優遇措置を受けられる「希少疾病用医薬品」への指定を認められた。アビガンはマダニが媒介する致死率の高いウイルス感染症に効果があるとされ、実用化に向けた試験開発の加速化が期待される。 

 希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)は、国内の対象患者数が5万人未満で、医療上、特に必要性が高いなどの条件に合う医薬品として、厚労相が指定する。アビガンは6月にも指定される見通し。

 アビガンは新型コロナウイルスの治療薬としては承認を得られなかったが、マダニにかまれて感染するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)に効果がある医薬品として関係者から注目されていた。富士フイルム富山化学が今回の指定を国に申請した。

  ●「致死率31%」

 SFTSは重症化すると死亡することがあり、致死率31%とする研究もある。国内では昨年、過去最多の118人(速報値)、今年も今月14日時点で43人が感染している。ワクチンや有効な治療薬はない。富山県内では昨年5月、犬2匹が感染。11月には60代女性の陽性が確認された。

 過去の臨床研究ではアビガンを投与した患者23人のうち19人が回復し、致死率が17.4%まで低下した。

 希少疾病用医薬品の指定を受けると、研究開発促進に向けた国の支援が受けられる。助成金の交付、試験開発の指導・助言を受けることができ、他の製品より先に承認審査が行われる。

 アビガンの共同開発者で富大名誉教授の白木公康氏は「死亡率が30%のSFTSに対し、富山発のアビガンが使用されることは良いニュースだ」と話した。

 ★重症熱性血小板減少症候群(SFTS) SFTSウイルスを原因とする感染症。主にマダニにかまれて感染する。2011年、中国で世界初の患者が報告され、その後、西日本を中心に国内でも患者が確認されている。人が感染すると6~14日程度の潜伏期を経て、発熱や全身のだるさ、下痢や腹痛などの症状が出る。発症したネコやイヌなどから人に感染した事例もある。

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