中古車店でアルバイト、世界へ挑む孤高のジャンパー 福崎出身、男子走り幅跳び日本歴代3位の吉田選手

日本歴代3位の記録で勝利するなど、上り調子の吉田弘道選手=福崎町役場

 男子走り幅跳びで日本歴代3位の記録を持つ兵庫県福崎町出身の吉田弘道選手(23)=神崎郡陸協=が、同町役場を表敬訪問した。今月横浜市であった大会で、自己最高の8メートル26で優勝。6月3日にある日本選手権で3位以内に入れば、夏の世界選手権代表入りも決まる。吉田選手は「まずは競技自体を楽しみたい」と日焼けした顔をほころばせた。(森下陽介)

 吉田選手は、福崎西中学校(同町福田)在校時に本格的に競技を始め、姫路商業高校から立命館大学へと進学。活動拠点を地元にするため卒業後も実業団などに所属せず、個人で練習を続けている。

 現在は中古車販売店でのアルバイトの傍ら、週の半分を同県姫路市内の陸上競技場で、もう半分は関西福祉大学(同県赤穂市)で学生に交じって練習している。同大学では、日本オリンピック委員会強化スタッフも務めた熊野陽人准教授の指導を受け、めきめきと上達している。

 最高の結果となった今月の大会だが、吉田選手は「今年はずっと不調だった」と振り返る。着地の姿勢が思い通りにいかず、徐々に他の動きもかみ合わなくなっていたという。不調は精神面にも響き、気付けば自信を失い、競技を楽しめなくなっていた。

 不安の中で迎えた大会当日。期待していなかった1本目に、今シーズンベストの7メートル74を跳べた。「最低限の仕事はできたと、ここで吹っ切れた」。2、3本目は微妙な調整がうまくいき、記録も伸びていく。「ファウルしてもいい」と思い切って臨んだ最終6本目。この日一番のジャンプを決めた。

 今月26日に大会の報告を受けた尾﨑吉晴町長は、「楽しんで跳べば結果は付いてくるはず。(次の大会も)気楽に平常心で頑張って」と激励した。現在の日本記録は8メートル40。吉田選手は「(自分の記録との差である)わずか14センチが遠いが、いずれは達成したい。2年後に東京である世界選手権に出るまでは、競技をやめられない」と闘志をにじませた。

 6月の日本選手権は大阪・ヤンマースタジアム長居で、世界選手権は8月19~27日にハンガリー・ブダペストで開かれる。

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