【寄稿】ぱちんこ 市場回復なるか(WEB版)/POKKA吉田

4月はスマスロ北斗のおかげもあって全国的にパチスロ市場が盛況となった印象が強い。振り返れば6.5号機の台頭からスマスロの登場、そして北斗の登場という流れだが、潮目がはっきり変わったのはやはり北斗登場からだと思っている。それだけ4月の北斗の登場は、市場にものすごい影響を与えたと私は評価している。

一方のぱちんこ市場がどうしても寂しい。仕置人が期待をほぼ一手に集めたが、スマスロ北斗のような圧倒的な稼働というわけにはいかなかった。悪い結果とは言わないが、ぱちんこ市場を牽引するような営業成績にはなっておらず、もちろん低迷するP機市場を活性化させてくれるという性質のものでもない。これはまあ、仕置人の責任ということではなく、仕置人以外に市場を活性化させてくれそうなラインナップが4月になかったということで、逆説的だが京楽「以外」の責任か、という気もしている。

5月以降の新機種についても、どうしてもパチスロの新機種に注目が集中してしまう。メダルもスマスロもともに注目機は盛りだくさんであり、スマスロ導入ホールとしてもそろそろ取捨選択ができつつある。スマスロ登場時の昨年11月の時点では先行導入ホールほど、ヴヴヴ、バキ、リノを同時に導入していた。ここから鏡の登場によって、少しずつ選択肢が増えていく。しばらくスマスロには新機種がなかった状態ではあるが、その間には沖ドキGOLDなどメダルの方で重要な機種が出ていた。そして4月になると北斗を中心にスマスロも追加で登場し5月以降も続々と新機種ラインナップがある。また、メダルのパチスロも注目機は多く、ゴールデンウィーク商戦もパチスロが中心となっていた店が多かった。

ぱちんこの方は、少しずつスマパチの販売予定新機種のアナウンスが出始めている。スマスロから半年弱遅れての登場となったわけだから、追い付け追い越せ的にラインナップが増えるのは良いことだろう。6.5号機が盛況になりつつある中のスマスロ登場とは違い、P機が凋落傾向にある中でのスマパチ登場だったことから、環境というか状況打開のハードルは高いとは思うが、そもそも一年前は「ぱちんこ>>>パチスロ」という収益構造だったのだ。一年で逆転するのはいくらなんでもはやすぎる。

ところで平和はeキャッツ・アイを発表したが、オリンピア・平和として考えると同グループはスマート遊技機の先頭を走っている。すべての遊技機メーカーを含めて、スマスロとスマパチを現時点で2機種リリースしているメーカーグループは他に存在しない。これは普通に開発企画・調達製造・販売営業能力としてものすごいことだと思う。

4月からゴールデンウィークにかけてのパチスロの大盛況を現場やデータで実感すると、どうしても「遊技機が良ければ市場は良くなる」という思いが強くなる。4月の新台として北斗があり、ハーデスがあって、ゴブリンスレイヤーがあって、そして5月も、というパチスロの流れを再確認すれば、目玉が仕置人に限定されていたぱちんことは条件が全然違う。5月以降、少しずつラインナップが増えてきているが、とにかくP機もスマパチも新機種リリース型式数がもっと増えてP機やスマパチでロングランが見込める成功機種が登場しなければならないだろう。パチスロでいうところのカバネリや鬼武者、北斗がぱちんこであるのかどうか。エヴァ咆哮やRe:ゼロはいつまでもつのか次第になってくるが、古い機種の稼働貢献が長いのは良いことでも、新しい機種が古い機種を「レギュレーションが厳しくなっていないのに」超えることができない、というのは、何か重大な問題が各メーカーの新機種開発企画にあるか、あるいは各ホールの予定割数にあるか、少なくともいずれかは確定的だとは思う。開発企画にあるという場合は、設計をどうしていくのが良いかを考えなければならないし、予定割数にあるのなら粗利益関係の計画を見直さなければならないだろう。私はこれは案外後者ではないかと疑っている。

というのも、とにかくぱちんこ、回らない。P機の新機種では最も高い評価を受けている大海5ですら、15回/千円を切るような釘が普通にある。私はパチプロではないし期待値をそもそも強く気にしないし、各機種のボーダーライン(分岐割数スタート数)をいちいちチェックしない。が、遊技してて「こんなスタートでは打つのがあほらしい」と思うことはある。これは感覚のようなものであるが、その感覚はおそらくほとんどの遊技客に共通している。

随分前から言い続けてきたことだが、gあたりの単価を計算するスーパー主婦もいるだろう。食材の安さを1円単位で節約する猛者である。が、ほとんどの主婦は感覚的な計算をしているというのが私のスーパーマーケットでの現場感。しかしそれでも「やり過ぎたらわかる」のだ。いちいち計算しなくてもコンビニはスーパーよりも高いのがわかるしスーパーによって値段が全然違うこともわかる。

コンビニに特に多いが、値段が高いことを糊塗するために、コンビニ専用の商品に作り替えているものが多い(カップ麺など)。また、既存の商品ではないPBに力を入れることが大手スーパーには増えてきた。拙宅は徒歩圏内に大手スーパーがいくつもあるため選べるのだが、肉ならどこ、魚ならどこ、野菜ならどこ、酒ならどこ、まとめて買うならどこ、みたいな選択肢は我が家で共有している。そしてその基準は「計算によってではなく、感覚によって」決まっている。

私はぱちんこ歴は30年を大幅に超える。18歳になる前から遊技していた計算だがそれはともかく、そのような私、しかもいちいち収支に頓着しない私が、もはや最近のぱちんこ島の釘について「呆れを通り越して完全にシラケている」ということは申し上げておきたい。すべての店がそうだとは言わないが「ものすごくたくさんの店がそういう状態だ」ということである。私が業界人でないなら、おそらくぱちんこを打つことは完全にやめているレベルである。

これ、随分前からなんどもいろんなところで繰り返し言い続けてきたが、全然変わらない。理由は単純で、ホールの予定割数計画は「集客、特に遊技意欲の向上と相関させていない」店がほとんどだからだ。確保するべき収益額が先にあるからしかたがない、高コスト体質なのはホール職域のせいではない、という抗弁を無数に近いくらいに聴いてきた。

私は今の状態に至る私なりの想定できる理由を申し上げているだけだ。パチスロが活況になりぱちんこが低迷しているのはこの半年くらいの最近の話である。この流れが続けば再びぱちんこは長い低迷期に入る。そのことを、規則改正前の、遊技くぎ問題による撤去回収後のぱちんこ市場に戻りかねないということを、ホールのみなさんには前提にしておいてほしいと思う。

一年前、ぱちんこが良くてパチスロが苦しかった。今、パチスロが良くてぱちんこが苦しければ、設置台数が多い分、苦しさの方が多いかもしれないわけだ。

ぱちんこ市場の回復はおそらく業界的には最重要である。単純な話、出せとは一切言わないが抜きすぎていると申し上げておきたい。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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