まちづくりの新概念「縮充」人口減でも幸せに 高齢化のまちにアドバイザー、救世主なるか 兵庫・佐用

縮充戦略アドバイザーに就任した佐伯亮太さん=いずれも佐用町佐用

 兵庫県佐用町が今年4月、地域づくりを専門で担う新たなポストを設けた。その名も「縮充(しゅくじゅう)戦略アドバイザー」。人口やまちの規模は縮小しても、人々が充実して暮らせるまちづくりを支援するという。一体どんな活動をしているのか。着任したまちづくりシンクタンク「Roof」(ルーフ、同県播磨町)共同代表の佐伯亮太さん(35)に同行した。(真鍋 愛)

 「地域を次世代につなぐためには、まちづくりに対する価値観を変える必要がある」。5月1日、同町上石井で開かれた、地域づくり協議会(地域協)のあり方を考える会合で、佐伯さんは住民や町職員を前にこう語った。

 石井地区は地域協が発足した2006年当時、800人以上が暮らしていた。だが、22年度末には524人に減少。高齢化率は55.2%に上昇した。

 それに伴い、地域協の活動は停滞。さらなる人口減が避けられない中で、縮充の実現を手助けする「救世主」として、佐伯さんが派遣された。

 地域協センター長の平井良さん(72)は「当事者である住民と町職員だけでまちづくりを考えるのは難しい。他地域の事情にも詳しい佐伯さんの力を借りたい」と信頼を寄せる。

 縮充は、全国各地でまちづくりの助言などを行うコミュニティーデザイナーの山崎亮さん=同県芦屋市=が提唱した概念。人口や税収は縮小しても、地域の営みや住民の生活を充実させるまちづくりを推奨する。

 同町は19年度から、町内13地区にある地域協の活動の見直しを始めた。議論が進む中で、自治会や行政も含めた町全体のまちづくりを再検討する必要があるとの意見が浮上。そこで同町が着目したのが縮充という考え方だった。

 同町は新設ポストの適任者として、佐伯さんに白羽の矢を立てた。佐伯さんは大学時代に都市計画を専攻。卒業後は明石高専の特命助教として、播磨町の団地を1棟丸ごと改装する事業や団地内のコミュニティー再生に取り組んできた。

 16年にルーフを設立。県内各地で自治会活動の見直しや空き家問題などにも携わり、現在、同町でも「まちづくりアドバイザー」として勤務している。

 佐用町では、週1回勤務。地域活動の見直しについて助言を行ったり、町職員を対象にまちづくりの研修を行ったりしている。

 研修では、本庁と支所の職員の交流も兼ねてグループワークを実施。架空の地域を例に挙げ、職員たちが課題を探し、解決策を出し合うなどしている。

 佐伯さんは「まちづくりでは、課題解決にどんな施策が必要か、仮説を立てるスキルが必要」と指摘。今後もこうした研修を定期的に開くとしている。

 佐用町での活動はまだ始まったばかりだが、佐伯さんは、同町が縮充の先駆者となることに期待を寄せる。「まちづくりに正解はない。人口が減っても幸せに暮らし続けられる仕組みについて、住民や町職員と語り合い、形づくっていきたい」と力を込めた。

### ■職員減少の役場内も改革 部署間連携を促す

 人口減少を前提にしたまちづくりを進める佐用町。「縮充戦略アドバイザー」に就任した佐伯亮太さんは、旧4町の合併後、職員数が減少した役場内の改革にも取り組んでいる。

 現在、町の職員数は242人(4月末時点)。ここ数年は新規採用数を減らすなどで人員体制のスリム化が図られ、合併直後の2005年と比べると、170人以上も減っている。

 一方、地域の課題はますます多様化。職員は担当業務以外の知識を求められることも多いが、ある職員は「目の前の仕事で手いっぱい。他部署のことまで知る余裕はない」とこぼす。

 こうした中、佐伯さんは、役場内の部署間連携を促す役割も担う。具体的には、地域から寄せられたさまざまな課題について、部署の枠組みにとらわれず、横断的に対処方法を考えるなどしている。

 佐伯さんは「職員同士で連携を進めるのは、人員的に限界がある。アドバイザーが各部署をつなぐ横糸として機能し、適切な支援につなげたい」とする。

 町企画防災課の谷本実沙さんは「(佐伯さんには)これまで当たり前だった制度や仕組みに切り込み、役場内でも縮充を進めてほしい」と期待を寄せる。

### ■縮充戦略アドバイザーらと活動、地域おこし協力隊1人募集

 佐用町は、「縮充戦略アドバイザー」らと活動する地域おこし協力隊の隊員1人を募集する。地域活動の支援や相談業務などを担当し、最長で3年間活動する。

 職種は「コミュニティデザイナー」。対象は18歳からおおむね50歳までで、任期終了後も同町に定住する意欲のある人。活動内容の説明や町内見学を行う「SAYO1日体験ツアー」に参加する必要がある。

 申込期間は6月19日~7月31日。町企画防災課に応募用紙を郵送(必着)または持参する。同課TEL0790.82.0664

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