全国初!「過去×今」で浸水危険度を独自判定 過去20年の被害履歴を蓄積 入間市が避難システムの実証実験

埼玉県入間市の気象避難支援システムで「浸水発生の見通し」を示すデータのイメージ(同市提供)

 埼玉県入間市は26日、浸水被害の履歴とリアルタイムの気象データを組み合わせることで、浸水の危険度を独自に判定する「気象避難支援システム」の実証実験を始めたと発表した。市域を10のエリアに分けて浸水の発生場所や時間帯を予測し、避難情報の発令の迅速化や細分化を目指す。市によると、同様のシステムは全国で初めてという。

 杉島理一郎市長は同日の定例会見で、システムについて「危険度の判断の材料にし、適切に避難行動を呼びかけていきたい」と述べた。

 気象避難支援システムは市と、気象データを提供する会社「スカイデータ」(東京)、コンサルタント会社「東京設計事務所」(同)の3者が構築した。

 被害履歴は過去20年間に市民から市に寄せられた床上浸水などの情報で、約1700件に及ぶ。発生日時や場所、状況などが記録されており、これらの情報を市域のマップに落とし込んだ。

 運用に当たっては気象庁から、雨量のデータをはじめ、警報・注意報の発令基準となる「危険度分布情報」などを取得する。こうしたデータを過去の被害履歴と照合することで、今後の雨量や時間帯を割り出す仕組みだ。

 システムでは市内を市役所と、九つの地区センターごとに区分。浸水が発生する可能性について、現在の状況や6時間先、72時間先までを「低」~「超」の4段階で、それぞれのエリアごとに予測する。市はシステムの予測に基づいた上で、市長が避難情報の発令を判断する。市は防災行政無線やホームページ上などで市民に周知する。

 水害時の警戒情報のうち避難指示の発令は従来、気象庁や気象予報士、市の情報などから総合的に判断してきた。市の担当者は「収集や分析を自動化することで、判断がより早く細かく、高精度になるのではないか」としている。

 市は2024年3月末までを実証実験の期間とし、運用の効果を確認する。

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