「やり返したら死んでしまった」交際相手殺害の罪に問われた女が正当防衛を主張 110番通報の音声も明らかに

おととし、広島県呉市のアパートで交際相手の男性を包丁で刺して殺害した罪に問われた女の裁判員裁判が始まりました。裁判では、女が事件後に110通報した後の音声が明らかになりました。

起訴状によりますと、住所不定・無職の 井上由利恵 被告(37)は、おととし12月、呉市八幡町のアパートで、この家に住む 当時39歳の男性の背中を殺意を持って包丁で2回突き刺し、殺害した罪に問われています。

髪を後ろで1つに結んだ姿で証言台に立った井上被告は、起訴状の内容について間違いがないか問われると「殺すつもりはありませんでした」と涙声で答えました。

検察側は、冒頭陳述で、「半同棲生活をしていた男性と井上被告は飲食をしていたところ、口論になり、井上被告は男性から顔を殴られた」「井上被告は台所の包丁を持ってリビングに戻り、こたつに座っていた男性の背中を包丁で刺した」と指摘しました。

一方、弁護側は、「井上被告は男性と口論になり、顔を数回強く殴りつけられて身の危険を感じた」「包丁で威嚇をしたが、それでも顔を強く殴られ、肩をめがけて包丁を刺したがもみ合いになったので背中に刺さった」と主張。

殺意はなく、正当防衛が成立するとして殺人罪について無罪を主張しました。

その後の証拠調べでは、事件当時、警察が現場で撮影した井上被告の顔写真が法廷の大きなスクリーンに表示されました。検察は「両目や両頬が赤く張れ、鼻血が出ていた」と説明しました。

また、井上被告が110番通報した際に警察とやりとりをする音声も明らかに‥。

警察
「何があったんですか?」
井上被告
「えっと、彼氏と…ケンカになって」
警察
「今、もめとるんですね」
井上被告
「それで、死んでしまった」
「もめてしまって、包丁出してきたけん、やり返したら死んでしまったんです」

井上被告は、泣きながら電話で通報しているようでした。

警察
「あなたが刺したの?」
井上被告
「うん。私もけがしとるけど、やり返したら死んでしまった。死ん…死んでしまった」
警察
「呼吸はしていない?」
井上被告
「もう冷たいもん」

井上被告は動揺した様子で、「やり返したら死んでしまった」と繰り返していました。

裁判長は、この裁判の争点について、▽井上被告に殺意があったかどうか、▽正当防衛が成立するかどうかと整理しています。

裁判は被告人質問などを経て、6月12日に判決が言い渡される予定です。

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