老舗金物店に「工芸館」 大樋町の「髙木屋」 今秋、若手作家を支援

今秋に「工芸館」としてオープンする洋風の応接室=大樋町

  ●幕末創業、5代目夫婦が改修

 幕末に創業した大樋町の老舗「髙木屋金物店」に、今秋にも若手作家の工芸品を並べる展示スペースが誕生する。明治期に建てられた店舗兼住居の町家の改修を始めて10年、金物を並べる店前はもちろん、土蔵前はサロン、2階和室は茶道や着付けの稽古場となり、活用が進む。市内で年間100軒の町家が解体される中、5代目夫婦は「先代の残した家を皆で育てていきたい」と話す。

 金物店は1848(嘉永元)年、鍛冶屋として創業、金物店を始めた明治期に町家を建て、大正に入って3代目の結婚を機に改修した。町家には大正ロマン感じる洋風の応接室が残っており、若手作家の作品を並べる「工芸館」として改修し、古い建物と手仕事の魅力を伝える場とすることにした。

 町家は店主の髙木猛さん(73)が金澤町家研究会に入って活動する中で、改修を行ってきた。第1期では2階和室を改修し、これまで目に触れなかった吹き抜けを表に出した。2期では昭和期に入れた店前のガラス戸は木製に戻し、蔵前はワークショップなどに利用できるサロンとした。

 かつて鍛冶場のあった店舗横の工房部分は50年ほど前から賃貸にしていたが、空き物件となったことから今年、3期工事として工芸館と合わせて改修することにした。現在は飲食店が入り、夏には塾が開業する。

 町家は改修を重ねるごとに開かれ、一日カフェや茶会、コーヒー教室などを企画し、建物の魅力を伝えている。この家で生まれ育った妻で茶道家の万寿美さん(70)は「先代から受け継いだ家を、時代に合った使い方をしていきたい」と語る。

 工芸館には、店で扱うこだわりの金物と同様、使いやすい手仕事の品を並べる予定で、髙木さん夫婦は「若い作家の発表の場にしたい。使いやすい品物を提案し、お客さんと共有していきたい」と期待した。

 16~19日、工芸館の内覧会を行う。中庭に面した和室で金物の時代の味わいを感じる展覧会も開く。

幕末に創業した髙木屋金物店

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