「セルフ写真館」県内でじわりと広がり 低価格、プロ機材で自撮り カメラ専門店、和服店がサービス始める

持ち込んだ小道具を手に、カメラに向かってポーズを取る合田さん夫婦=5月下旬、宇都宮市陽東3丁目

 プロ仕様のカメラ機材がセットされた無人スタジオで自撮りを楽しむ「セルフ写真館」が、県内でじわりと広がっている。プロカメラマンによるスタジオ撮影に比べ、低価格ながらも本格的な機材を使えることから、首都圏や関西圏を中心にサービスが拡大。本県でも若い世代などの来店のきっかけにしようと、カメラ専門店や老舗呉服店がサービスを始めており、新たな取り組みに注目が集まる。

 5月下旬、宇都宮市陽東3丁目のサトーカメラ宇都宮本店。1組の夫婦がスタジオでマタニティフォトの撮影に臨んだ。同市道場宿町、医療従事者合田恭平(あいだきょうへい)さん(32)と、間もなく出産予定の妻亜由美(あゆみ)さん(31)だ。

 備え付けのスピーカーで2人の思い出の曲を流しながら、手元のリモコンを操作して制限時間の15分間で約160枚を撮影した。亜由美さんは「費用が抑えられるし、自分たちで撮るとカジュアルな雰囲気で好みに合う。プロの撮影と使い分けながら今後も利用したい」と満足した様子だ。

 同店によると、セルフ写真館は韓国で人気に火が付いたという。同店は2021年9月、スペースの有効活用と若年層の誘客を狙い、サービスを導入した。基本プランは2人で15分3千円。画像データ10枚と2Lサイズのプリント写真4枚が付く。プラス千円で全画像データを受け取れる。

 和装やドレスでの撮影、好きなアイドルのグッズを手に撮影する“推し活”、家族写真など目的はさまざま。人目を気にせず自然体で撮影できる点が好評で、シニア層にも利用が広がりつつある。週末を中心に毎月20〜25件の予約が入る。

 観光のついでなどで県外客の利用もあるという。担当者の福田紗代子(ふくださよこ)さん(40)は「本来は撮影しようと思っていない人が行動に出る。撮る目的によりプロとセルフそれぞれの良さが生かされる」と話す。

 創業270年を超える小山市のいせやきもの館も22年2月、併設スタジオでサービスを始めた。15分間で1人2千円の撮影プランのほか、和装プランも設けた。呉服店の客との相互利用を図り、着物への関心も高めたい狙いだ。

 担当の羽田(はねだ)実南(みなみ)さん(25)は「プリクラやアプリでの加工と違い、高画質でナチュラルに“盛れる”写真を撮れるところがはやりつつある」と分析する。

 益子町の小林写真館は約1年前から取り組む。2人まで3千円で20分間撮影でき、全データを提供する。ただ、写真館の本業と差別化し収益を確保するため、記念写真の利用は受け付けていない。

 小林光幸(こばやしみつゆき)代表(53)は「友人同士やカップルにラフな格好で撮ってもらえたら」と話している。

 

持ち込んだ小道具を手に、カメラに向かってポーズを取る合田さん夫婦=5月下旬、宇都宮市陽東3丁目

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