立体駐車場の課税基準、床面積の算定めぐり市と業者が対立 結論は最高裁に

固定資産税の課税額を巡り大津市と運営業者が係争中の機械式立体駐車場。現在は稼働しておらず、建物内の設備は取り払われている(大津市浜大津4丁目)

 固定資産税の課税額を決める基準となる床面積の算定方法を巡り、大津市と機械式立体駐車場の運営業者が裁判で争う事態となっている。立体駐車場にある各駐車パレットの床面積の合計値に課税してきた市に対し、業者は1階部分の床面積を適用するべきと主張している。一審、二審は業者側の訴えを認めたが、市側も引かず、互いの主張は最高裁にまで持ち込まれた。

 問題となっているのは、公共施設やマンションが入る複合ビル「明日都浜大津」(浜大津4丁目)にある立体駐車場。浜大津地域の市街地再開発事業として同ビルが建設された際、兵庫県西宮市の不動産業者が再開発組合から購入し、1998年から保有・運営してきた。ビル内の店舗従業員らに利用されていたが、現在は閉鎖されている。

 立体駐車場がある駐車場棟は明日都の本体ビルに連結しており、登記上は一つの建物になっている。このため、駐車場の運営業者はマンション部分の住民と同様、建物の一部を持つ区分所有者の1人という位置付けになっている。

 市は、運営業者の専有床面積は機械式立体駐車場にある1台15平方メートルのパレット全52台を合計した780平方メートルと算出。建築基準法は機械式立体駐車場の床面積を算定する場合、パレット台数分の合計としており、99年度からこの基準で固定資産税や都市計画税を課税してきた。

 これに対し、業者側は立体駐車場の1階部分の床面積86平方メートルを基準にすべきだと主張。2017年度分までは市の請求通りに納税したが、18年度分の約61万円の賦課決定の取り消しと、時効にかからない01年度分以降の過払い相当額など計1328万円の損害賠償を求め、20年に大津地裁に提訴した。

 区分所有者の専有床面積について、区分所有法は「壁などで囲まれた部分の水平投影面積」と定義している。地方税法は区分所有法に準拠して課税すると定めている。「水平投影面」を、市はパレット台数分の合計、業者側は所有部分の床面積と捉えたことが、両者の主張の根拠になっている。

 地裁判決は、市の算定方法は定義に合わないとして、市の賦課決定の一部を取り消した。損害賠償が認められなかったことを不服とした業者側が控訴した大阪高裁では、業者側の訴えが全面的に認められた。

 

 一審、二審とも、市が主張してきたパレット1台ずつへの賦課は退けている。それでも市資産税課は「実際の使用面積で算出するほうが、マンション住民など他の区分所有者の納得を得やすい」との姿勢を崩さない。2月上旬に上告し、結論は最高裁に持ち越されることになった。

 両者の争いは、法律の解釈の違いが背景にある。今回は区分所有となっている機械式立体駐車場への課税という極めてまれな事例だが、課税する役所側と納税者の主張が異なることは珍しくない。

 固定資産税は市町村が納めるべき額を計算して納税者に通知する賦課課税方式となっている。立命館大の望月爾教授(税法)は、「担当職員は、複雑なケースの場合は所管省庁や専門家に相談するなどして法解釈を万全にする必要がある」とする一方、「納税者側が算定方法や金額を事前にチェックできる仕組みを導入するなど、制度自体の見直しも必要では」と指摘する。

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