【近藤隆盛さん・ちはるさん(ちはる農園)】黒埼茶豆の美味しさを全国へ

近藤隆盛さん・ちはるさん(ちはる農園)

プロフェール
近藤 隆盛(こんどう たかもり)さん・ちはるさん:新潟市西区出身。隆盛さんは鮮魚店などに勤務した後、家業の農業を後継する。5年前に兼業農家から専業に転身し、夏から晩秋にかけては枝豆、それ以外の時期は葉物野菜を育て、産直所やネット通販を中心に出荷している。甘くてコクのある「ちはる農園」の枝豆と野菜は美味しいと評判。

ガタチラスタッフ:『新潟人152人目は、「ちはる農園」の近藤さんご夫婦です!
5年前に兼業農家から専業に転身し、新潟が誇る黒埼茶豆を中心においしい農作物を育てているお二人です。インタビュー中はジョークが止まらない(笑)隆盛さんでしたが、おいしい枝豆を作るためにたくさんの努力をされています!枝豆作りで大切にしていることや今後の目標などたくさんのお話をお聞きしました。素敵な笑顔で取材に応じてくださり、ありがとうございました!』


鮮魚店から枝豆農家へ

──隆盛さんはもともと別の仕事をされていたのですね。

隆盛さん:そうなんです。鮮魚店や運送業など、様々な仕事を経験した後に家業の農業を始めました。兄弟の中では末っ子でしたが、子供の頃から一番手伝っていましたね(笑)。でも、家を継ぐつもりはありませんでした。

──農業を継いだきっかけは何だったのですか?

ちはるさん:義父母の代に一時は農地を貸したりもしましたが、高齢化などで返却されることが多くなったんです。それなら「自分たちでやった方がいい」と2人で始めました。

隆盛さん:最初は他の仕事と兼業でしたが、5年前から専業でやっています。専業になったことで家族との時間が取れるようになったのは良かったですね。収穫量などは自分の頑張り次第なので、常に自分との戦いです(笑)。

──「ちはる農園」という名前は専業で始めた頃につけたのですか?

隆盛さん:そうです。産直で販売するには名前が必要で、「近藤隆盛」で始めようかと思いましたが、ゴツイじゃないですか(笑)。別の名前を考えた時に、いつも応援してくれている妻の名前が良いなと思い、「ちはる農園」にしました。

──ステキな名前ですね!農業を始めた頃は大変でしたか?

隆盛さん:始めの頃は家庭用のような小さい機材しかなく、すぐに新しいものを購入できるわけでもなかったので大変でしたね。近所の農家さんが気にかけてくれて、機材を借りたりしながら少しずつ整えました。そのうち、畑が大きくなってきて、「やっぱりトラクターが欲しい!」となり、買いましたけどね(笑)。

──「枝豆」以外には何を作っているのですか?

ちはるさん:冬菜や小松菜、白菜などの葉物野菜のほか、トマトなどを輪作で栽培しています。輪作をすることで、土の栄養バランスが取れて、作物の病気予防にもなるんです。栽培した作物はいずれも農産物直売所で販売しています。

枝豆収穫は時間との闘い

──枝豆の収穫はいつ頃から始まるのですか?

隆盛さん:6月中旬頃から始まり、11月頃まで続きます。朝採り枝豆は、陽が昇らない気温の低い時間帯に収穫しなければいけないので、深夜から作業をします。当園は収穫も手作業で、ヘッドライトの灯りを頼りに作業するのですが、警察に枝豆泥棒じゃないかと怪しまれて職務質問を受けたこともあります(笑)。

ちはるさん:この地域の枝豆農家あるあるじゃないですかね(笑)。枝豆は日が昇って外気温が上がると熱を持ってしまい、あっという間に鮮度と風味が落ちてしまうんです。だから、涼しい夜明け前に作業しないといけません。1本1本を丁寧に収穫して、枝葉を取り袋詰めして産直所へ出荷しています。

──美味しいものを届けるために、そんなに早い時間から作業するのですね。ちはる農園さんのこだわりは何ですか?

隆盛さん:肥料ですかね。今年は肥料が値上がりしたこともあり、米ぬかで有機肥料を手作りしました。緑肥(※)として、菜の花を収穫せずに残しておいて、畑にすき込むこともしています。個人的な考えですが、菜種油が含まれているので、枝豆がコクと甘味のある良い味になる気がするんですよ。美味しい枝豆にするために日々いろんなことを試しています。

緑肥…新鮮な緑色植物をそのまま田畑にすき込んで肥料とすること。

──新しい試みをされているのですね。

隆盛さん:失敗が多いですけどね(笑)。周りは枝豆農家の先輩方ばかりなので、新しい取り組みなどを参考にしています。また、他の農家もやっていることですが、茶豆の種を自家採取しています。自家採取の種を使う方が美味しいものができると思っています。

──茶豆は何品種くらい作っているのですか?

隆盛さん:新潟茶豆盆茶豆ぴかり茶豆などの黒埼茶豆のほか、肴豆も含めて、毎年4~6種類くらいですね。早生から順番に植えていくのですが、なるべく重ならないようにしています。

雨にも負けず、安全で美味しいものを

──1年目の収穫は思い通りにできましたか?

ちはるさん:最初の年は収穫がなかったですね。上手く芽が出なかったり、鳩に食べられることもありました。その反省を次の年に活かしながらの繰り返しです。黒埼の土壌は栄養豊富で保水性の高い粘土質なので、枝豆栽培に向いています。一方、水はけが悪く、雨が降り過ぎて水没するのが一番困ります。

隆盛さん:雨が多いと根腐れを起こすので、水が溜まったら必死に溝を作って排水しています。今は水はけがいい高さの場所にある耕作放棄地を借り、さらに収穫量を増やしています。他からも「耕作放棄地を使わないか」と頼まれるようになりましたね(笑)。

──「耕作放棄地」を畑として再生するには、どれくらい時間がかかるのですか?

隆盛さん:早ければ翌年から使えるようになりますが、雑草だらけで開墾に時間がかかる場所が多いです。でも、雑草が有機肥料になってくれるという利点もあります。「耕作放棄地」は年々増えているので、何か力になりたいと思っています。

──一番のモチベーションは何ですか?

隆盛さん:売れ行きがいいと「美味しい」と思ってもらえていると感じて、とても嬉しいですね!「もっと美味しいものを作ろう!」と気合いが入ります。

ちはるさん:一時的に産直販売所に出していなかったら、「買いに行ったのに置いてなかった」と怒られたことがあります(笑)。こうして当園の商品を求めてくださるお客様がいるのはありがたいですね。

──最後に、今後挑戦したいことを教えてください!

隆盛さん:まずは、「安全で美味しいものを作ること」「自分が食べられない、食べたくないものは作らない」ということです。これから、枝豆のシーズンを迎えるので美味しい枝豆を楽しみにしていただきたいと思います。そして、後継者不足で増えている「耕作放棄地」を再生することで、地域の役に立っていきたいです。

【ちはる農園】
住所:新潟市西区金巻1835

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