鳥かごやリンゴなど描かれるものには隠された意味が!? 村山輝星が新たに学んだアートの魅力

TOKYO MX(地上波9ch)のアート番組「はじめての美術館」(毎月第2・4日曜日 12:29~)。この番組は多摩美術大学卒で芸術家としても活躍する俳優・片桐仁とタレント・村山輝星ちゃんが各地の美術館を巡り、展示作品の楽しみ方を子どもにもわかりやすく紹介します。4月23日(日)の放送では、東京・港区六本木にある国立新美術館で“愛”が描かれた名作に触れました。

◆古くから芸術家が描いてきた永遠のテーマ"愛”

今回、片桐と輝星ちゃんがやってきたのは、東京・港区六本木にある国立新美術館。

地下1階、地上4階建てと全国の美術館のなかでも随一の大きさを誇る美術館で、今春開催しているのが「ルーヴル美術館展 愛を描く」(6月12日(月)まで開催)です。

タイトルにもあるように、今回はフランス・パリにある世界で最も入場者が多く、レオナルド・ダ・ヴィンチの名作「モナ・リザ」があることでも有名なルーヴル美術館から"愛”をテーマにした西洋絵画が73点来日。愛は古くから芸術家が挑んできたテーマのひとつで、恋愛だけでなく親子愛などその種類も数多。そんなさまざまな愛の形を、主任研究員の宮島綾子さん案内のもと鑑賞します。

◆"天使”と"キューピッド”は違う!?

会場に入ってすぐに2人を出迎えてくれたのは、縦2m68cm、横1m67cmもある大きな絵画、18世紀フランスを代表する画家フランソワ・ブーシェの「アモルの標的」(1758年)です。

その迫力に、「すご~い、いっぱい天使。みんな羽が生えていますね。あとは真ん中にハートがある」と思わず声をあげる輝星ちゃん。260年以上前に描かれたこの作品は、愛が誕生した瞬間を表現しているそうです。

そして、輝星ちゃんが"天使”と言っていたのは実は違い、描かれているのは"アモル”。ラテン語で"愛”を意味する言葉で、別名は"キューピッド”。天使はキリスト教のもので神様のお手伝いをする存在。一方、アモルは古代ギリシャ・ローマ神話の愛の神で、持っている矢で愛を生み出す立派な神様だとか。それを知った片桐は「天使じゃないんですか!?」とビックリ。

ここでクイズ! 「アモルは恋をさせたい相手のどこを狙って矢を射つ?」。

輝星ちゃんは「よくハートに矢が刺さっているのを見るから……心臓じゃないですか」と予想すると、見事に正解。

さらに、輝星ちゃんが気になったポイントを学芸員さんが解説する新コーナー「きらりんポイント」では、「あの鳥さん(鳩)はなんですか?」と画中の2羽の鳩について質問します。

実はこれも大きな意味が。鳩は昔からつがい(ペア)になると相手を変えないという逸話があり、つまり描かれている2羽の鳩は恋人を象徴しています。そのため愛がテーマの西洋絵画には鳩がつがいで描かれることがよくあったと宮島さん。

輝星ちゃんは初めての大きな絵の迫力に驚きつつ「大きいからいろいろなところにいろいろな意味が隠されていて面白いですね」と興味を示します。

◆鳥かごにリンゴ…そこに隠された意味とは?

次に鑑賞したのは、カップルの後ろに3人の女性が描かれたニコラ・ランクレの「鳥籠」(1735年頃)。

一目見た輝星ちゃんは「さっきのとちょっと雰囲気が違いますよね。(アモルはいないけど)恋人同士みたい」と感想を口にします。

「アモルの標的」とは違い、これは現実の人間を描いた作品で、当時18世紀のフランスはモチーフが神話一辺倒だった時代から人間が登場するようになる過渡期。そして、本作では当時多くのしきたりに縛られていた2人の上流貴族があえて農民のような格好でデートをしている様子を描いています。

ここで再びクイズ! 出題されたのは、「(中央に描かれたデート中の)女性が持っているものは何? それにはどんな意味がある?」。

悩む輝星ちゃんに「タイトルを見るとバレる」とのヒントが与えられると「"鳥かご”ですか!」と何かはわかったものの、それが何を意味しているかまではわからず。一方、片桐は「私は鳥かごのなかの鳥ということですか? 自由に生きたいけど、貴族だから決まった人と結婚しなきゃいけないとか!?」と推察するも、不正解。

正解は、鳥かごは"愛の虜になった幸せな状態を表す”愛のシンボルで、愛の場面によく描かれています。

続いて鑑賞したのは、ジャン=オノレ・フラゴナールの「かんぬき」(1777~1778年頃)。

作品を前に、輝星ちゃんは「なんかピッタリっていう感じの勢いですね」、「女の人が"置いてかないで!”って」と言い、片桐は「ピタッと時が止まった感じ」、「女の人がグッと抱えられて、男の人が何か持っているのかな」、「男の人が怒っているのかな?」と思い思いに印象を語ります。

2人とも異なる印象を抱いていましたが、それこそがこの作品の醍醐味。よく見ると、男性が右手でドアにカギをかけようとしています。女性が男性に寄り添っているようにも抵抗しているようにも見え、嬉しいようにも嫌がっているようにも見える、どちらかわからないのも面白みのひとつです。

そして、左側に描かれているテーブルの上にはリンゴが1個置いてあります。

ここでクイズ! 「この絵に描かれたリンゴにはどんな意味がある?」。

この難問に、輝星ちゃんは「リンゴといえば…アダムとイブじゃないかな? 保育園のときにその発表をしました!」、「禁断の果実なのに食べちゃって、お仕置きされるんじゃなかったかな!?」と推理します。

アダムとイブとは、旧約聖書に出てくる神さまが創った最初の人間で、2人は神様の言いつけを破り、禁断の果実を食べてしまったため楽園から追い出されてしまうというお話。

正解は禁断の果実で、この恋に対する警告の意味があると言われているそうです。

◆愛はひとつだけじゃない! 何通りもの愛がある!?

最後の作品は、ギヨーム・ボディニエの「イタリアの婚姻契約」(1831年)です。

彼はフランスの画家ですが、本作の舞台は19世紀のイタリア。裕福な農民の家で椅子に座る左右の男女が結婚の契約書を交わす場面が描かれていますが、2人が恋に落ちてのものなのか、親が決めた婚姻なのかはわかりません。

本作を見て、片桐は「(右側の)男の人はまんざらでもない感じですが、女性はちょっと下を向いていますね」と指摘するも、それも恥ずかしいからなのか、気が進まないからなのかは不明。また、花婿と思われる男性の隣にいる女性も妹なのか、はたまた子どもという話もあるそうで、そうした謎について作家は何も情報を残していないため、真偽の程は謎に包まれています。

ここで最後のクイズ! 「この絵の中にある笑えるポインは?」。

輝星ちゃんは「契約書を描いている方の隣の男性、お父さんかな!? どこ見てるんだろう……」とひとりの男性が気になったようですが、しばらくして「わかっちゃった! このお父さんが召使いさんのことを"きれいだな~”って見ているんじゃないですか」と答えると、これまた大正解。花嫁の父親と思しき人物が隣の女性に見惚れています。

宮島さんの解説に、輝星ちゃんは「出てくる人物が少ない絵も2人だけの世界みたいでいいけど、こういうふうにたくさんの人が描かれている絵もいろいろなところで愛が描かれているような気がして面白いですね」と笑顔を見せます。

この日は、"愛”に関するさまざまな作品に触れた輝星ちゃん。総じて「いろいろな愛の描かれ方がしていて、最初のほうはふんわりした雰囲気のアモルから始まって、リンゴとか鳥かごとか暗示もあって、隠されたものを見つけたときはすごく楽しかったです!」と満足げ。

片桐も「ただの上手な絵、ただの恋人同士の絵かなと思ったら、それだけじゃないっていうね。こういう昔の上手な絵を見たときに、上手いなって思うけど何かあるんじゃないかって探したくなるよね」と感想を語ると「作者が絵に込める愛情みたいなものも感じましたし、愛が何通りもあるって知りました!」と新たな発見を喜ぶ輝星ちゃんでした。

※開館状況は、国立新美術館の公式サイトでご確認ください。

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<番組概要>
番組名:はじめての美術館
放送日時:毎月第2・4日曜 12:29~12:55<TOKYO MX1>
「エムキャス」でも同時配信
出演者:片桐仁、村山輝星
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/hajimeteno_art/

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