アイガモ放鳥、今年で最後 生産者高齢化、20年で幕 三田・本庄小児童、環境に優しい農法学ぶ

歓声を上げてアイガモを水田に放った=三田市須磨田

 本庄小学校(兵庫県三田市東本庄)の児童が、学校近くの田んぼにアイガモのひなを放した。元気よく鳴きながら泳ぐ姿に児童たちは「かわいい」と大喜び。放鳥の体験は約20年続く恒例行事だったが、生産者の高齢化のため今年で最後となった。(土井秀人)

 3、4年生の14人が参加した。ひなは2週間ほど前に生まれたばかりで、薄黄色や、黒のまだら模様の羽毛に覆われている。最初は恐る恐る持ち上げていた児童たちも、慣れてくると友達と見せ合うなどして大はしゃぎ。田んぼに放たれたひなは早速、虫や雑草を食べていた。3年の女子児童は「ピーピーと鳴いてかわいかった。持ってみるとすごく体が熱かった」。同じ3年の男子児童は「ふわふわ。最初は暴れていたけど、ちゃんと持てばおとなしくしてくれた」と笑顔だった。

 児童を招いたのは、市内でアイガモ農法に取り組む「三田合鴨稲作会」。1998年に結成され、かつては11軒の農家が参加していたが、現在は2軒だけに。福本妙子さん(80)=三田市=も体力の限界を感じ、今年でやめることにした。

 放鳥の後、福本さんやJA兵庫六甲の職員が、アイガモ農法について説明した。アイガモが虫や雑草を食べてくれ、ふんも肥料になる。農薬を使わないため環境にも人にも優しい農法だが、草引きのため毎日のように田んぼに入らないといけない。アイガモを狙う野生生物から守るためには、電気柵や鳥よけのネットを設置する必要もある。福本さんは「本当はもっともっと続けたかったけど、あまりに作業が多すぎて。おばあちゃんには体力的に無理」と寂しげに話した。

 児童から「アイガモが大きくなったらどうするの」と質問があると、福本さんは食肉になることを伝えて優しく語りかけた。「かわいそうと思うかもしれない。けれど、みんなも命をいただいて生きている。牛にも鳥にも魚にも、野菜にだって命はある。手を合わせて『いただきます』というのは、命をいただくことへの感謝なんですよ」

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